大切に育てている家庭菜園の野菜やバラにアブラムシが大量発生してお困りではないですか?この記事を読めば、牛乳や石鹸水など薬剤を使わない方法から即効性のある市販薬まで、状況別の駆除法が分かります。
結論として、自力での駆除が難しい大量発生には、専門業者への依頼が最も確実です。
業者に頼むメリットや費用相場、効果的な予防策まで網羅的に解説し、アブラムシの悩みを根本から解決します。
目次
あなたの植物は大丈夫?アブラムシの生態と発生原因
大切に育てている植物に、いつの間にかびっしりと付いている小さな虫。それは「アブラムシ」かもしれません。
アブラムシは、気づいたときには大量発生していることが多く、植物を弱らせる厄介な害虫です。
効果的な駆除を行うためには、まず敵であるアブラムシの正体を知ることが重要です。
ここでは、アブラムシの生態や被害、そしてどのような条件下で発生しやすいのかを詳しく解説します。
正しい知識を身につけて、あなたの大切な植物を守る第一歩を踏み出しましょう。
アブラムシの生態と植物への被害
アブラムシは、カメムシ目に属する体長2mm~4mmほどの非常に小さな昆虫です。
種類によって体色は緑色、黒色、茶色、赤色など様々で、植物の柔らかい新芽や葉の裏、茎などに群がって発生します。
アブラムシの最も恐ろしい特徴は、その驚異的な繁殖力です。
特に春と秋の過ごしやすい気候では、メスが単独で子を産む「単為生殖」によって爆発的に増殖します。
条件が良ければ、わずか10日ほどで成虫になり、次々と子供を産むため、「少しだけだから」と油断していると、あっという間に植物全体が覆われてしまうことも少なくありません。
アブラムシが植物に与える被害は、単に見た目が悪くなるだけではありません。主な被害は以下の3つです。
- 吸汁による直接的な被害
アブラムシはストローのような細い口(口針)を植物の師管に突き刺し、栄養分が豊富な汁を吸います。これにより植物は栄養を奪われ、生育が悪くなります。特に新芽や若葉が被害に遭うと、葉が縮れたり変形したりして、花が咲かなくなったり、実の付きが悪くなったりする原因となります。大量に寄生されると、植物全体の元気がなくなり、最悪の場合は枯れてしまうこともあります。 - ウイルス病(モザイク病など)の媒介
アブラムシは、ウイルスに感染した植物の汁を吸った後、別の健康な植物に移動して吸汁することで、病気を媒介します。代表的なものに、葉にまだら模様が現れる「モザイク病」があります。一度ウイルス病に感染した植物は、現代の技術では治療することができません。そのため、病気の拡大を防ぐためには、媒介者であるアブラムシを早期に駆除することが極めて重要になります。 - 「すす病」の誘発
アブラムシは、吸汁した汁から糖分を多く含んだ甘い排泄物を出します。これを「甘露(かんろ)」と呼びます。この甘露が葉や茎、地面に付着すると、それを栄養源として黒いカビ(すす病菌)が繁殖します。これが「すす病」です。すす病になると、葉の表面が黒いすすで覆われたようになり、光合成が妨げられて植物の生育がさらに悪化します。また、見た目も非常に悪くなります。
アブラムシが発生しやすい時期と場所
アブラムシの発生を防ぐには、彼らが好む環境を知ることが不可欠です。
アブラムシは特定の時期と場所に集中して発生する傾向があります。
発生しやすい時期は、主に春(3月~6月頃)と秋(9月~11月頃)の2回です。
これは、アブラムシの活動や繁殖に最も適した気温が15℃~25℃前後であるためです。
植物が新芽を伸ばし始める春は、柔らかく栄養豊富なエサが多いため、特に注意が必要です。
真夏は高温によって繁殖が一時的に衰えたり、天敵の活動が活発になったりするため発生は少なくなりますが、油断は禁物です。
冬は卵の状態で越冬することが多いですが、温室や室内など暖かい環境では年間を通して発生する可能性があります。
発生しやすい場所は、「風通しが悪く、日当たりの悪い場所」です。密集して植えられた植物の株元や、壁際などは特に注意が必要です。
また、植物の中では、栄養分が多くて柔らかい「新芽」「若葉」「茎の先端」「つぼみ」「葉の裏」などに好んで集まります。
バラやアサガオ、ハイビスカスなどの花、キュウリやナス、トマト、カブなどの野菜、ミカンなどの果樹まで、非常に多くの植物に寄生します。
アブラムシとアリの共生関係とは
植物の周りでアリが行列を作っているのを見かけたら、それはアブラムシが発生しているサインかもしれません。
アリとアブラムシは、「共生関係」と呼ばれる非常に密接な関係にあります。
アブラムシは、栄養豊富な植物の汁を吸い、余分な糖分を「甘露」として排泄します。
この甘露はアリにとって大変なごちそうです。
アリはアブラムシから甘露をもらう代わりに、アブラムシの天敵であるテントウムシやヒラタアブ、寄生バチなどを追い払い、アブラムシを外敵から守るボディーガードの役割を果たします。
中には、アブラムシを口でくわえて、より安全でエサが豊富な新しい場所に運ぶアリもいるほどです。
この共生関係により、アブラムシは天敵に捕食されるリスクが減り、安心して繁殖を続けることができます。
つまり、アリがいるとアブラムシの被害がさらに拡大しやすくなるのです。
そのため、アブラムシを駆除する際には、同時にアリの対策を考えることも効果的なアプローチとなります。
庭やベランダでアリを頻繁に見かけるようになったら、植物をよく観察し、アブラムシがいないかチェックする習慣をつけましょう。
【状況別】自分でできるアブラムシの駆除方法9選
大切に育てている植物にアブラムシがびっしり…そんな光景は避けたいもの。
ここでは、アブラムシの発生状況や、あなたの園芸スタイルに合わせて選べる9つの駆除方法を具体的にご紹介します。
「農薬は使いたくない」という方から「とにかく今すぐ全滅させたい」という方まで、最適な方法がきっと見つかります。
薬剤を使わない!手軽なアブラムシ駆除法
小さなお子様やペットがいるご家庭、あるいは無農薬で野菜やハーブを育てている方におすすめなのが、薬剤を使わない駆除方法です。
身近なものを使ったり、自然の力を借りたりして、環境に優しくアブラムシを退治しましょう。
テープや歯ブラシで物理的に駆除する
アブラムシの数がまだ少ない初期段階で最も手軽で確実なのが、物理的に取り除いてしまう方法です。
ガムテープやセロハンテープなどの粘着テープを指に巻き、アブラムシがいる葉や茎に軽く押し当ててペタペタと貼り付けて取り除きます。
新芽などデリケートな部分は、使い古しの柔らかい歯ブラシで優しくこすり落とすのも効果的です。
植物を傷つけないよう、力加減には十分注意してください。
水流で洗い流す
ホースの先端を指でつまんで水圧を上げたり、シャワーノズルのジェット水流を使ったりして、アブラムシを水で勢いよく洗い流す方法です。
特に、比較的丈夫な植物であれば、広範囲のアブラムシを一度に吹き飛ばすことができます。
ただし、水圧が強すぎると植物を傷める原因になるため注意が必要です。
また、地面に落ちたアブラムシが他の株に移動して再発する可能性もあるため、一時的な対策として考えましょう。
牛乳や石鹸水スプレーで窒息させる
家庭にあるもので手軽に作れるスプレーも有効です。牛乳を水で薄めずにスプレーボトルに入れ、アブラムシに直接噴射します。
牛乳が乾く過程で膜を作り、アブラムシの気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させます。
散布後、牛乳が乾いたら必ず水で洗い流してください。放置すると腐敗臭やカビの原因になります。
また、食器用洗剤を水で200〜500倍程度に薄めた石鹸水も同様の効果があります。
界面活性剤の働きでアブラムシを窒息させます。
ただし、濃度が濃すぎると植物に薬害が出る可能性があるため、目立たない部分で試してから全体に散布することをおすすめします。
こちらも使用後は水で洗い流しましょう。
木酢液やニームオイルで忌避する
殺虫ではなく、アブラムシが嫌がる成分で寄せ付けにくくする方法です。
木酢液(もくさくえき)は、木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りがアブラムシを遠ざけます。
規定の倍率に水で薄めて、葉の裏表にまんべんなく散布します。土壌改良効果も期待できます。
ニームオイルは、「ニーム」というインド原産の樹木の種子から抽出される天然オイルです。
アブラムシの食欲を減退させたり、脱皮を阻害したりする効果があり、継続的に使用することで徐々に数を減らしていきます。
こちらも水で希釈して使用します。
どちらも化学殺虫成分を含まないため安心して使えますが、即効性は低いため、予防や発生初期の対策として定期的に散布するのがポイントです。
天敵のテントウムシを味方につける
アブラムシの天敵であるテントウムシやヒラタアブ、クサカゲロウといった益虫(えきちゅう)の力を借りる、究極にエコな方法です。
特にテントウムシの幼虫は成虫よりも多くの量を捕食するため、もし庭で見かけたら、アブラムシが発生している植物の近くにそっと移してあげましょう。
益虫が活動しやすいように、殺虫剤の使用を控えることが大切です。
ただし、アブラムシの出す甘い汁(甘露)を求めて集まるアリは、天敵からアブラムシを守る習性があるため、アリがいる場合は先に対策が必要になります。
市販薬で徹底的にアブラムシを駆除
アブラムシが大量発生してしまい、手作業では追いつかない場合や、とにかく早く確実に駆除したい場合には、市販の薬剤(農薬)の使用が最も効果的です。
用途に合わせて様々なタイプがあるので、特徴を理解して正しく使いましょう。
即効性ならスプレータイプの殺虫剤
アブラムシに直接噴射することで効果を発揮する「接触剤」タイプの殺虫剤です。
スプレータイプは購入後すぐに使え、狙った場所にピンポイントで散布できる手軽さが魅力です。
「ベニカXファインスプレー」のように、病気の予防も同時にできるタイプもあります。
薬剤がかかったアブラムシには即効性がありますが、葉の裏など、薬剤がかからなかった場所には効果がありません。
散布する際は、葉の裏や新芽の付け根など、アブラムシが隠れやすい場所にもしっかりと噴射することが重要です。
効果が持続する浸透移行性の粒剤
株元にまくだけで、有効成分が根から吸収されて植物全体に行き渡るタイプの薬剤です。
代表的な製品に「オルトラン粒剤」や「ベニカXガード粒剤」などがあります。
植物の汁を吸ったアブラムシが駆除されるため、スプレーがかかりにくい葉の裏や、新しく伸びてくる芽に付くアブラムシにも効果を発揮します。
効果が約1ヶ月持続するため、駆除と同時に予防もできるのが最大のメリットです。
ただし、効果が現れるまでに数日かかること、また野菜や果樹など口にする植物には、収穫までの使用禁止期間が定められている場合があるため、使用前に必ず製品ラベルの記載を確認してください。
詳しくは住友化学園芸の病害虫ナビなどで確認できます。
食品成分由来のスプレー剤
「化学合成農薬には抵抗があるけれど、手作りスプレーよりは高い効果が欲しい」という方におすすめなのが、デンプンやヤシ油、なたね油といった食品由来の成分で作られたスプレー剤です。
これらの薬剤は、有効成分がアブラムシの体を物理的に覆うことで窒息させて駆除します。
有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用が認められている製品が多く、「ベニカマイルドスプレー」や「アーリーセーフ」などが代表的です。
使用回数に制限がなく、収穫前日まで使える野菜が多い点も安心です。ただし、効果の持続性はないため、定期的な散布が必要です。
油で窒息させるマシン油乳剤
マシン油(鉱物油)を主成分とする薬剤で、散布すると油の膜が害虫を覆い、窒息させて駆除します。
薬剤抵抗性が発達しにくく、アブラムシだけでなくカイガラムシやハダニにも効果があるのが特徴です。
主に、植物が休眠している冬期に、規定の濃度に希釈して散布することで、越冬する害虫やその卵を駆除するために使われます。
新芽が出ている時期に濃い濃度で使用すると薬害が出やすいため、使用時期や濃度は製品の指示を厳守する必要があります。
大量発生ならプロにお任せ!アブラムシ駆除を業者に依頼するメリット
「自分で駆除してもキリがない」「気持ち悪くて触れない」そんな大量のアブラムシ被害にお困りなら、害虫駆除の専門業者に依頼するのが最も確実で早い解決策です。
一見、費用がかかるように思えますが、時間や手間、精神的な負担、そして何より植物を守れることを考えれば、大きなメリットがあります。
ここでは、プロに任せるべき理由を詳しく解説します。
専門業者によるアブラムシ駆除の確実性と即効性
専門業者の最大の強みは、その確実性と即効性です。プロはアブラムシの生態を知り尽くしており、発生状況や植物の種類を的確に診断します。
その上で、数ある業務用薬剤の中から最も効果的なものを選択し、専用の機材で散布します。
市販の薬剤では届きにくい葉の裏や新芽の隙間にも、プロ用の噴霧器を使えば薬剤をムラなく行き渡らせることが可能です。
これにより、隠れている成虫はもちろん、これから孵化する卵まで徹底的に駆除し、再発のリスクを大幅に低減させます。
また、植物へのダメージを最小限に抑える知識と技術も持ち合わせているため、大切な庭木や草花を枯らしてしまう心配もありません。
すぐに被害を食い止めたい場合に、これほど頼りになる存在はないでしょう。
自分で行うより安全で手間がかからない
アブラムシ駆除は、想像以上に手間と時間がかかる作業です。
特に大量発生した場合、何度も薬剤を散布したり、地道に手で取り除いたりする必要があり、精神的にも大きな負担となります。
業者に依頼すれば、薬剤の選定から購入、散布、後片付けまで、面倒な作業をすべて一任できます。
また、安全面でも大きなメリットがあります。強力な殺虫剤の取り扱いには専門知識が必要であり、誤った使い方をすると人体やペットに健康被害を及ぼす危険性も。
特に小さなお子様やペットがいるご家庭では、プロが安全に配慮した薬剤や方法で施工してくれるため安心です。
庭木など高所での作業も、転落のリスクなく安全に任せることができます。
アブラムシ駆除にかかる業者の費用相場
アブラムシ駆除を業者に依頼する場合の費用は、被害の状況や範囲によって変動します。
一般的な費用相場は以下の通りです。
- 部分的な駆除(植木鉢、ベランダなど): 8,000円~15,000円程度
- 庭木1本(中~高木): 10,000円~25,000円程度
- 庭全体の駆除: 20,000円~50,000円程度
上記の金額はあくまで目安であり、費用は主に「被害範囲の広さ」「庭木の高さ」「アブラムシの発生量」「使用する薬剤の種類」などによって決まります。
多くの業者では、基本料金に出張費や作業費が含まれていますが、料金体系は業者によって異なるため、必ず事前に見積もりを取り、作業内容と料金の内訳を確認することが重要です。
失敗しない優良な駆除業者の選び方
大切な植物を任せる業者選びは慎重に行いたいものです。
以下のポイントを参考に、信頼できる優良な業者を選びましょう。
- 見積もりが明確で分かりやすいか
作業内容や料金の内訳が詳細に記載されているかを確認しましょう。「一式」といった曖昧な表記ではなく、どの作業にいくらかかるのかが明確な業者は信頼できます。追加料金が発生するケースについても、事前に説明を求めてください。 - 実績と専門性があるか
ウェブサイトなどで、これまでの害虫駆除、特に庭木や植物に関する施工事例を確認しましょう。植物の知識が豊富な業者であれば、駆除後のケアや再発防止策についても的確なアドバイスが期待できます。 - 問い合わせ時の対応が丁寧か
電話やメールでの問い合わせに対し、親身になって相談に乗ってくれるか、質問に分かりやすく答えてくれるかも重要な判断基準です。被害状況を詳しくヒアリングし、最適なプランを提案してくれる業者を選びましょう。 - アフターフォローや保証制度があるか
万が一、駆除後にアブラムシが再発した場合に、無料で再施工してくれるなどの保証制度があると安心です。保証の期間や内容を事前に確認しておきましょう。 - 複数の業者から相見積もりを取る
1社だけでなく、2~3社から見積もりを取り、料金やサービス内容を比較検討することをおすすめします。これにより、地域の費用相場を把握でき、不当に高額な請求をする悪質な業者を避けることができます。
これらのポイントを押さえ、納得のいく業者に依頼することが、アブラムシ問題を根本から解決するための鍵となります。
知らないと逆効果?アブラムシ駆除の注意点
アブラムシを駆除しようと躍起になるあまり、良かれと思ってやった対策が、かえって大切な植物を傷つけたり、アブラムシの被害を拡大させたりすることがあります。
ここでは、効果的な駆除を行うために知っておくべき注意点と、やってはいけないNGな方法を詳しく解説します。
正しい知識を身につけ、植物を守りながら確実にアブラムシを退治しましょう。
やってはいけないNGな駆除方法
手軽にできる方法の中にも、やり方を間違えると植物に深刻なダメージを与えてしまうものがあります。
以下に挙げる方法は特に注意が必要です。
強すぎる水圧での洗い流し
ホースのジェット水流などでアブラムシを吹き飛ばす方法は、手軽で効果的に見えます。
しかし、水圧が強すぎると、植物の柔らかい新芽や葉、茎、花びらを傷つけてしまいます。
傷ついた部分は病原菌の侵入口となり、別の病気を引き起こす原因にもなりかねません。
特に、バラの若葉やハーブ類、草花などのデリケートな植物には絶対に行わないでください。
水をかける際は、霧吹きやシャワーモードで優しく洗い流す程度に留めましょう。
濃すぎる手作りスプレー(牛乳・石鹸水など)
牛乳や石鹸水をスプレーしてアブラムシを窒息させる方法は、安全性が高く人気ですが、濃度が非常に重要です。
牛乳を原液のまま、あるいは濃すぎる石鹸水を使用すると、植物の葉にある気孔(呼吸や蒸散を行うための穴)を塞いでしまいます。
これにより光合成が阻害されたり、葉が呼吸できなくなったりして、植物自体が弱ってしまいます。
また、乾いた牛乳や石鹸成分が葉に残り、夏場の強い日差しで「葉焼け」を起こす原因にもなります。
使用後は必ず水で洗い流すか、規定の希釈倍率を厳守してください。
食用油や廃油の直接散布
油で膜を作って窒息させるという原理は殺虫剤にも応用されていますが、家庭にあるサラダ油や天ぷら油などの食用油をそのままスプレーするのは非常に危険です。
粘性が高すぎるため、アブラムシだけでなく植物の気孔を完全に塞いでしまい、ほぼ確実に植物を枯らしてしまいます。
油を使った駆除を行いたい場合は、必ず園芸用に製品化された「マシン油乳剤」など、植物への影響が考慮されたものを正しく使用してください。
熱湯をかける
熱湯はアブラムシを即死させることができますが、同時に植物の細胞も破壊してしまいます。
地上部の葉や茎はもちろん、土に染み込んだ熱湯は根にも深刻なダメージを与え、植物全体を枯死させる可能性が極めて高い危険な行為です。
どんなにアブラムシを根絶したいと思っても、植物に熱湯をかけるのは絶対にやめましょう。
薬剤を使用する際の注意点
市販の殺虫剤は非常に効果的ですが、使い方を誤ると植物や周辺環境、人体に悪影響を及ぼす可能性があります。
使用前には必ず製品のラベルを熟読し、以下の点を遵守してください。
適用植物と使用回数を必ず守る
農薬として登録されている殺虫剤には、使用できる植物(適用作物)が法律で定められています。
特に、野菜やハーブ、果樹など口にする可能性のある植物に登録外の薬剤を使用することは農薬取締法で禁止されています。
また、同じ植物に対しても使用できる回数や時期に制限があります。
効果を高めようと規定回数を超えて使用すると、植物に薬害が出たり、収穫した作物に基準値を超える農薬が残留したりする危険性があります。
希釈倍率と散布量を厳守する
「濃い方がよく効くはず」と考えて規定よりも濃い濃度で薬剤を希釈したり、必要以上に大量に散布したりするのは絶対にやめてください。
濃度が高すぎると、葉が縮れたり、変色したり、枯れたりする「薬害」の直接的な原因になります。
必ず計量カップや計量スプーンを使い、正確な希釈倍率を守りましょう。
散布する時間帯と天候を選ぶ
薬剤散布に最適な時間帯は、風のない日の早朝か夕方です。
気温が高い日中に散布すると、水分がすぐに蒸発して葉の表面で薬剤の濃度が急激に高まり、薬害が出やすくなります。
また、散布した薬剤がすぐに乾いてしまい、効果が十分に発揮されないこともあります。
雨の日の散布は、薬剤が流されて効果がなくなるため避けましょう。
風が強い日は、薬剤が周囲に飛散し、近隣の住宅や他の植物、通行人にかかる恐れがあるため大変危険です。
同じ系統の薬剤を連続使用しない
同じ有効成分の殺虫剤を繰り返し使用していると、その薬剤に耐性を持った「抵抗性アブラムシ」が出現することがあります。
抵抗性がつくと、その薬剤が全く効かなくなってしまいます。
これを防ぐためには、作用性の異なる複数の薬剤を順番に使う「ローテーション散布」が有効です。
製品のラベルや公式サイトで有効成分を確認し、異なる系統の薬剤をいくつか用意しておくと良いでしょう。
ミツバチなどの益虫への配慮
薬剤の中には、アブラムシだけでなく、植物の受粉を助けてくれるミツバチやマルハナバチなどの有益な昆虫にも影響を与えてしまうものがあります。
特に、花が咲いている時期に散布する場合は注意が必要です。
製品によってはミツバチへの影響について注意書きがあるので、よく確認し、影響の少ない薬剤を選んだり、花には直接かからないようにしたりするなどの配慮をしましょう。
適切な保護具を着用する
薬剤を散布する際は、マスク、ゴーグル、農薬用の手袋、長袖・長ズボンを着用し、薬剤を吸い込んだり、皮膚や目に付着したりしないよう、自分の体をしっかり守りましょう。
散布後は手や顔をよく洗い、うがいをすることも忘れないでください。
安全に作業を行うことが、ガーデニングを長く楽しむための基本です。
もう発生させない!アブラムシの徹底予防策
アブラムシの駆除が終わっても、安心はできません。アブラムシは非常に繁殖力が高く、条件が揃えばすぐに再発してしまいます。
大切なのは、駆除後の「予防」です。
アブラムシが寄り付きにくい環境を日頃から作ることで、大量発生のリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは、今日から実践できる4つの徹底予防策をご紹介します。
風通しと日当たりを改善する
アブラムシは、ジメジメして風が通らない薄暗い場所を好みます。
植物の健康のためにも、生育環境の改善は最も基本的な予防策です。
具体的には、植物の枝や葉が密集している場所を剪定しましょう。
特に、内側に向かって伸びる枝や古い葉を切り落とすことで、株の中心部まで日光が届き、風が通り抜けるようになります。
これにより、湿気がこもりにくくなり、アブラムシの発生を抑制できます。
また、鉢植えの場合は、壁際に置きっぱなしにせず、定期的に場所を移動させたり、鉢の向きを変えたりするだけでも効果的です。
株周りの雑草も、アブラムシの隠れ家になるため、こまめに取り除くことを心がけましょう。
窒素肥料の与えすぎに注意する
植物の成長に欠かせない肥料ですが、与え方によってはアブラムシを呼び寄せる原因になります。
特に「窒素(N)」成分の多い肥料は、葉や茎を柔らかく成長させる効果がありますが、これがアブラムシの大好物なのです。
窒素過多で軟弱に育った新芽にはアミノ酸が豊富に含まれており、アブラムシにとって格好の栄養源となってしまいます。
対策としては、肥料を与える際は必ず規定量を守り、特に春先の新芽が伸びる時期は与えすぎに注意してください。
肥料を選ぶ際は、窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)がバランスよく配合されたものを選びましょう。
中でも、根や茎を丈夫にする働きのある「カリウム(K)」を適切に与えることが、病害虫に強い植物を育てる上で重要です。
コンパニオンプランツを活用する
コンパニオンプランツとは、近くに植えることで互いに良い影響を与え合う植物のことです。
特定の植物が放つ香りでアブラムシを遠ざけたり、天敵を呼び寄せたりする効果が期待できます。
アブラムシの忌避効果が期待できる代表的なコンパニオンプランツには、以下のようなものがあります。
- ハーブ類:ミント、ローズマリー、ラベンダー、タイムなど、香りの強いハーブはアブラムシが嫌うため、寄せ付けにくくする効果があります。
- キク科植物:マリーゴールドやカモミールは、アブラムシを遠ざける効果があると言われています。特にマリーゴールドは、土の中のネコブセンチュウ対策としても有名です。
- ネギ類:ニラ、チャイブ、ニンニクなどのツンとした香りは、アブラムシの忌避に役立ちます。バラの株元にチャイブを植えるのは、定番の組み合わせです。
これらの植物を防ぎたい野菜や花の近くに植えることで、農薬に頼らない自然な予防策となります。
黄色い粘着シートを設置する
羽の生えたアブラムシ(有翅虫)は、キラキラと光るものや黄色に誘引される習性があります。
この習性を利用したのが、市販されている「黄色い粘着シート」です。
このシートを支柱などに吊るして植物の近くに設置することで、飛来したアブラムシを捕獲できます。
これだけで完全に防ぐことは難しいですが、アブラムシがどこからか飛んできていることを早期に発見する「モニタリング」ツールとして非常に有効です。
粘着シートにアブラムシが付き始めたら、発生初期のサインです。
すぐに葉の裏などをチェックし、増殖する前に手で取り除くなどの対策を講じましょう。
粘着シートは、ホームセンターや園芸店で手軽に購入できます。
まとめ
この記事では、アブラムシの生態から自分でできる駆除方法、再発させないための予防策までを解説しました。
発生初期であれば、テープや牛乳スプレーなど手軽な方法で対処できます。
しかし、手に負えないほど大量発生してしまった場合は、専門業者への依頼が最も確実で安全な選択肢です。
専門知識で原因から根絶し、再発防止まで徹底してくれるため、大切な植物を確実に守ることができます。
ご自身の状況に合った最適な方法を選び、アブラムシの被害から植物を守りましょう。