
大切に育てているキウイの葉が食べられたり、幹に穴が開いていたりしてお困りではありませんか?
家庭菜園でのキウイ栽培における害虫対策は、被害を最小限に抑えるための「早期発見・早期駆除」と、害虫を寄せ付けないための「予防」が最も重要です。
この記事では、初心者の方でも害虫のサインを見逃さないための症状別チェックリストから、カイガラムシやカミキリムシといった主要な害虫ごとの具体的な駆除方法までを網羅的に解説します。
家庭で使える農薬の選び方はもちろん、農薬を使わない木酢液などを活用した安全な対策、日々の観察や剪定といった予防策まで、あなたのキウイを害虫から守るための知識と実践的な方法がすべて分かります。
目次
キウイに害虫が発生する主な原因とは
大切に育てているキウイに害虫が発生すると、がっかりしてしまいますよね。
しかし、害虫は理由なく突然現れるわけではありません。
多くの場合、キウイの生育環境や管理方法に原因が潜んでいます。
害虫の発生は、キウイが発している「助けて」のサインかもしれません。
ここでは、害虫を引き寄せてしまう主な原因を掘り下げて解説します。
原因を正しく理解することが、効果的な駆除と予防の第一歩です。
1. 風通しと日当たりの悪化
キウイの害虫発生における最大の原因の一つが「風通しの悪さ」です。
キウイのつるや葉が密集して生い茂ると、株の内部は空気がよどみ、湿度が高い状態が続きます。
このようなジメジメした環境は、カイガラムシやアブラムシ、うどんこ病などの病害虫にとって格好の住処となります。
特に、葉の裏や枝が込み合った部分は害虫の隠れ家になりやすく、一度発生すると一気に増殖してしまう危険性があります。
また、日当たりが悪いとキウイの光合成が十分に行われず、株全体が弱ってしまいます。
健康な株は害虫に対する抵抗力を持っていますが、弱った株はその抵抗力が低下し、害虫の被害を受けやすくなるのです。
2. 不適切な剪定
風通しや日当たりの問題は、不適切な剪定によって引き起こされることがほとんどです。
キウイは生育旺盛なつる性植物なので、定期的な剪定を怠ると、あっという間に枝葉が密集してしまいます。
不要な枝や古い枝、内側に向かって伸びる枝などを放置すると、株内部の風通しが悪化する直接的な原因となります。
さらに、枯れ枝や弱った枝は、カイガラムシの越冬場所になったり、カミキリムシの産卵場所になったりすることもあります。
適切な時期に適切な剪定を行い、株全体に光と風が通るように管理することが、害虫を寄せ付けないための基本中の基本と言えるでしょう。
3. 肥料の与えすぎ(特に窒素過多)
キウイを元気に育てたい一心で肥料をたくさん与えてしまうことが、かえって害虫を呼び寄せる原因になる場合があります。
特に注意したいのが「窒素(チッソ)」成分の与えすぎです。
窒素は葉や茎を大きくする働きがありますが、過剰になると組織が軟弱で水分を多く含んだ状態になります。
このような柔らかくみずみずしい葉や新芽は、アブラムシなどの吸汁性害虫にとって格好のごちそうです。
アブラムシは軟弱な組織に口針を刺しやすく、栄養を吸収しやすいため、窒素過多の株に集中的に発生する傾向があります。
有機肥料であっても、与えすぎは禁物です。キウイの生育ステージに合わせた適量の施肥を心がけ、バランスの取れた土壌環境を維持することが重要です。
4. 周辺の雑草や植物からの飛来
害虫は、キウイの株だけにいるわけではありません。
畑や庭の周りに生えている雑草も、害虫の重要な発生源や隠れ家となります。
例えば、アブラムシやハダニは多くの種類の雑草に寄生し、そこで増殖した後に風に乗ってキウイの木に飛来してきます。
特に、キウイの株元に雑草が生い茂っていると、害虫が移動しやすくなるだけでなく、風通しを悪化させる原因にもなります。
こまめに除草を行い、キウイの周辺を清潔に保つことは、外部からの害虫の侵入リスクを減らす上で非常に効果的です。
また、近くで他の野菜や果樹を育てている場合、そこから害虫が移動してくる可能性も考慮し、庭全体の防除を考える必要があります。
【症状で判断】キウイの害虫チェックリスト
大切に育てているキウイの様子がいつもと違う…そんな時は、害虫が発生しているサインかもしれません。
害虫対策は早期発見・早期対応が何よりも重要です。
まずはキウイの木に現れている症状をよく観察し、原因となっている害虫を特定しましょう。
ここでは、代表的な症状別に考えられる害虫をリストアップしました。
ご自身のキウイの状態と照らし合わせて、チェックしてみてください。
葉や枝に白い綿のようなものが付着している
キウイの葉の裏や付け根、枝の分岐点などに、白い綿や粉で覆われたようなものが付着していたら、それは「カイガラムシ」の仕業である可能性が非常に高いです。
この白い物質は、コナカイガラムシ類が付着していたり、ワタフキカイガラムシの卵のう(卵が入った袋)であったりします。
カイガラムシは植物の樹液を吸って生育を阻害するだけでなく、排泄物がすす病の原因にもなるため、見つけ次第、早急な対策が必要です。
特に風通しの悪い場所で発生しやすい傾向があります。
葉がベタベタして黒いすすが付いている
葉を触るとベタベタしており、まるで黒いすすが付いたように汚れている場合、「アブラムシ」や「カイガラムシ」の発生が疑われます。
このベタベタの正体は、これらの害虫が出す「甘露(かんろ)」という甘い排泄物です。
アリがキウイの木に集まっている場合も、この甘露が目的であることが多く、害虫発生のサインとなります。
さらに、この甘露を栄養源にして「すす病」というカビの一種が繁殖すると、葉や枝が黒いすすで覆われてしまいます。
すす病は見た目が悪いだけでなく、葉の光合成を妨げてキウイの生育を著しく悪化させる原因となるため、注意が必要です。
葉の色がかすれて白っぽくなっている
キウイの葉の緑色が薄くなり、まるで細かい白い斑点が無数にあるように「かすり状」に見える場合、「ハダニ」が大量発生している可能性があります。
ハダニは0.5mm程度と非常に小さく肉眼での確認は困難ですが、葉の裏に寄生して汁を吸います。
汁を吸われた部分は葉緑素が抜けてしまい、白い斑点となって現れるのです。
被害が進行すると葉全体が白っぽくなり、光合成ができなくなって早期に落葉してしまいます。
特に高温で乾燥した環境を好み、梅雨明けから夏にかけて被害が拡大しやすい害虫です。
幹に穴が空きおがくずのようなものが出ている
キウイの幹の根元付近に穴が空いていたり、その周辺におがくずのような木くず(フラス)が落ちていたりしたら、それは非常に危険なサインです。
これは「カミキリムシ」の幼虫、通称「テッポウムシ」が幹の内部に侵入している証拠です。成虫が幹の表面に卵を産み付け、孵化した幼虫が幹の内部を食い荒らしながら成長します。
この木くずは、幼虫が食べ進んだ際に出るフンと木くずが混ざったものです。
放置すると木の内部が空洞になり、水や養分が全体に行き渡らなくなって、最悪の場合は木全体が枯れてしまう深刻な被害につながります。
葉や新芽が食べられている
キウイの葉、特に柔らかい新芽や若い葉がギザギザに食べられていたり、穴が開いていたりする場合、複数の害虫が考えられます。
「コガネムシ」の成虫は葉を好んで食害します。
夜行性の種類も多く、日中に姿が見えなくても夜間に活動していることがあります。
また、イモムシやケムシの仲間である「ヨトウムシ(夜盗虫)」や「シャクトリムシ」なども葉を食害する代表的な害虫です。
ヨトウムシは日中土の中に隠れ、夜になると這い出してきて葉を食べるため、姿が見えないのに被害だけが広がるという特徴があります。
新芽が食べられると、その後の生育に大きく影響するため、早期の発見と駆除が重要です。
キウイの主要な害虫と駆除方法
キウイフルーツの木を元気に育てるためには、害虫の早期発見と適切な対処が欠かせません。
ここでは、キウイに発生しやすい主要な5種類の害虫について、その被害症状や発生時期、そして具体的な駆除方法を詳しく解説します。
それぞれの特徴を理解し、大切なキウイの木を守りましょう。
カイガラムシの駆除と対策
被害の症状と発生時期
カイガラムシは、キウイの枝や幹、葉に固着して吸汁する害虫です。
白い綿のようなものや、硬い殻のようなものが付着していたら要注意。
被害が進行すると、排泄物(甘露)にカビが発生して「すす病」を引き起こし、枝葉が黒く汚れます。
これにより光合成が阻害され、樹勢が弱まる原因となります。
種類によって異なりますが、主に春から秋にかけて活動が活発になり、5月~7月頃に幼虫が多く発生します。
効果的な駆除方法
成虫は硬い殻で覆われているため薬剤が効きにくいです。
そのため、数が少ないうちは歯ブラシや竹べらなどで物理的にこすり落とすのが最も確実な方法です。
幼虫が発生する5月~7月頃や、休眠期の冬(12月~2月)に、マシン油乳剤を散布すると効果的に駆除できます。
すす病が発生している場合は、殺菌剤も併用しましょう。
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アブラムシの駆除と対策
被害の症状と発生時期
アブラムシは、キウイの新芽や若葉の裏に群生し、樹液を吸って生育を阻害します。
吸汁された葉は縮れたり変形したりします。また、カイガラムシ同様に甘露を排泄するため、すす病の原因にもなります。
ウイルス病を媒介することもあるため、早期の対策が重要です。
特に気温が穏やかな春(3月~5月)と秋(9月~10月)に大量発生しやすい傾向があります。
効果的な駆除方法
発生初期であれば、粘着テープで貼り付けて取り除いたり、牛乳や木酢液を水で薄めたスプレーを吹きかけたりする方法が有効です。
数が増えてしまった場合は、アブラムシに適用のある殺虫剤(例:マラソン乳剤、ベニカXファインスプレーなど)を散布してください。
テントウムシなどの天敵を保護することも、アブラムシの発生を抑制するのに役立ちます。
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ハダニの駆除と対策
被害の症状と発生時期
ハダニは0.5mm程度の非常に小さな害虫で、主に葉の裏に寄生して吸汁します。
被害を受けた葉は、葉緑素が抜けて白っぽいカスリ状の斑点が無数に現れ、光合成能力が低下します。
被害が拡大すると葉全体が白っぽくなり、やがて枯れ落ちてしまいます。
高温乾燥を好むため、梅雨明け後の夏場(6月~9月)に特に発生しやすくなります。
効果的な駆除方法
ハダニは水に弱いため、定期的に葉の裏に勢いよく水をかける「葉水」が発生予防と初期駆除に効果的です。
牛乳スプレーも窒息させる効果が期待できます。
多発した場合は、殺ダニ剤(例:コロマイト乳剤、ダニ太郎など)を使用します。
ハダニは薬剤抵抗性を持ちやすいので、同じ薬剤の連続使用は避け、系統の異なる薬剤をローテーションで散布することがポイントです。
カミキリムシ(テッポウムシ)の駆除と対策
被害の症状と発生時期
カミキリムシの成虫はキウイの枝や樹皮を食べますが、本当に恐ろしいのはその幼虫である「テッポウムシ」です。
成虫が幹に産み付けた卵から孵化した幼虫が幹の内部に侵入し、木部を食い荒らします。
株元におがくずのようなフン(木くず)が落ちていたら、幼虫が内部にいるサインです。放置すると木が衰弱し、最悪の場合は枯死してしまいます。
成虫は初夏から夏(5月~8月)にかけて活動します。
効果的な駆除方法
幹に穴を見つけ、木くずが出ていたら、針金を穴に差し込んで幼虫を刺殺します。
または、穴から園芸用の殺虫スプレー(専用ノズル付きのもの)を注入して駆除する方法もあります。
成虫は見つけ次第捕殺しましょう。
予防策として、株元に防虫ネットや不織布を巻き付け、産卵を防ぐことが非常に有効です。
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コガネムシの駆除と対策
被害の症状と発生時期
コガネムシの成虫は、キウイの葉や花、若い果実を食害します。一方、幼虫は土の中で根を食べます。
特に幼虫による根の食害は深刻で、被害が進むと水分や養分を吸収できなくなり、株全体の生育が悪くなったり、ぐらついたりします。
成虫は初夏から夏(6月~9月)にかけて発生し、夜間に活動することが多いです。
効果的な駆除方法
成虫は見つけ次第、捕殺します。
夜間に活動するため、懐中電灯を持って見回るのも良いでしょう。
幼虫対策としては、植え付け時や春先に、土壌に殺虫剤(例:ダイアジノン粒剤5など)を混ぜ込むのが効果的です。
また、成虫の飛来と産卵を防ぐために、株全体を防虫ネットで覆うのも有効な予防策となります。
農薬を使ったキウイの害虫駆除
さまざまな対策をしても害虫の被害が拡大してしまう場合、農薬の使用が効果的な選択肢となります。
特に、カイガラムシやカミキリムシのように、樹木自体を枯らしてしまう可能性のある害虫には、農薬による的確な駆除が重要です。
家庭菜園で農薬を使うことに不安を感じる方もいるかもしれませんが、製品のラベルに記載された使用方法や注意点を正しく守れば、安全かつ効果的に害虫を防除できます。
ここでは、家庭菜園で使える農薬の選び方から、散布する際の具体的な時期や注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
家庭菜園で使える農薬の選び方
農薬を選ぶ際に最も重要なのは、必ず「キウイフルーツ」に登録されている製品を選ぶことです。
農薬は、農薬取締法に基づき、作物ごとに登録されています。
登録のない農薬を使用すると、作物に薬害が出たり、人体に影響を及ぼす残留農薬の基準値を超えてしまったりする危険性があるため、絶対に使用しないでください。
どの農薬が使えるかは、農林水産省の農薬登録情報提供システムで確認できます。
その上で、駆除したい害虫の種類に合わせて農薬を選びましょう。主な害虫と有効な農薬成分の例は以下の通りです。
- カイガラムシ:越冬している幼虫や卵には、休眠期(12月〜2月)に散布する「マシン油乳剤」が非常に効果的です。
- アブラムシ・ハダニ:発生初期であれば、でんぷんやなたね油を主成分とした、気門を物理的に塞いで窒息させるタイプの農薬がおすすめです。有機JAS規格(オーガニック栽培)でも使用できる製品が多く、収穫前日まで使えるものもあります。
- カミキリムシ(テッポウムシ):幼虫が幹に侵入した場合は、専用のノズルが付いた殺虫スプレーを穴に噴射して駆除します。
- 広範囲の害虫に:アブラムシ、ケムシ類など幅広い害虫に効果がある「スミチオン乳剤」や「マラソン乳剤」といった昔からある家庭園芸用の殺虫剤も有効ですが、使用時期や回数には特に注意が必要です。
農薬には、希釈不要ですぐに使えるスプレータイプと、水で薄めて使う乳剤や水和剤タイプがあります。
初心者の方や、数本しか育てていない場合は、手軽に使えるスプレータイプが便利です。
広範囲に散布したい場合やコストを抑えたい場合は、自分で希釈するタイプを選ぶと良いでしょう。
農薬を散布する時期と注意点
農薬の効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、散布する時期と方法が非常に重要です。
以下のポイントを必ず守りましょう。
散布に適した時期と天候
- 時期:害虫の発生初期に散布するのが最も効果的です。病害虫の活動が少ない冬の休眠期に行う「冬期防除(マシン油乳剤など)」は、春以降の発生を大きく抑制できるため、ぜひ行いましょう。
- 天候:風がなく、晴れた日を選びます。雨が降ると薬剤が流れてしまい効果が薄れます。また、強風の日は薬剤が飛散し、自分にかかったり近隣に迷惑をかけたりする危険性があります。
- 時間帯:気温が高い日中の散布は、薬害(葉が焼けるなど)の原因となるため避けてください。朝早い時間帯か、夕方の涼しい時間帯が適しています。
散布時の注意点
- 保護具の着用:農薬を散布する際は、長袖・長ズボンを着用し、農薬用のマスク、ゴーグル、手袋を必ず身につけ、薬剤を吸い込んだり皮膚に付着したりしないようにしましょう。
- 散布方法:葉の裏や枝の付け根など、害虫が隠れやすい場所にも薬剤がしっかりかかるように、ムラなく丁寧に散布します。風上から風下に向かって散布するのが基本です。
- ラベルの確認と遵守:使用前には必ず農薬のラベルを熟読し、「希釈倍率」「使用時期」「総使用回数」を厳守してください。特に、収穫前の一定期間は使用が禁止されている「収穫前日数」は、安全な果実を食べるために絶対に守る必要があります。
- 周辺への配慮:ミツバチなどの益虫に影響を与える農薬もあります。開花時期の散布は避けるなど、周辺の環境にも配慮しましょう。また、洗濯物やペット、近隣の畑などにかからないよう細心の注意を払ってください。
希釈した農薬は効果が落ちるため、作り置きはせず、その日のうちに使い切りましょう。
使用後の噴霧器はよく洗浄し、空になった容器は自治体のルールに従って適切に処分してください。
農薬を使わないキウイの害虫駆除と予防
「家庭菜園で育てるキウイだから、できるだけ農薬は使いたくない」と考える方は多いでしょう。
化学農薬に頼らなくても、害虫の被害を抑える方法はたくさんあります。
ここでは、環境や人体に優しく、初心者でも取り組みやすい害虫駆除と予防の方法を具体的に解説します。
農薬を使わない方法は、効果が現れるまでに時間がかかったり、手間が必要だったりすることもありますが、安全なキウイを収穫するために、ぜひ試してみてください。
手で取り除く物理的な駆除方法
最もシンプルで直接的な方法が、害虫を見つけ次第、手や道具を使って取り除く物理的駆除です。
被害が広がる前の初期段階で非常に効果的であり、こまめな観察とセットで行うことで、害虫の大量発生を防ぐことができます。
カイガラムシは、成虫になると硬い殻で覆われて薬剤が効きにくくなります。
そのため、数が少ないうちに見つけ、古い歯ブラシやヘラなどで丁寧にこすり落とすのが最も確実な駆除方法です。
枝や幹を傷つけないように注意しながら作業しましょう。
アブラムシは新芽や葉の裏に群生します。
粘着力の弱いテープを貼り付けて剥がしたり、牛乳スプレーをかけた後に水で勢いよく洗い流したりするのが有効です。
数が少なければ、指で潰してしまっても構いません。
コガネムシやカミキリムシの成虫は、見つけ次第捕殺します。
特にコガネムシは、早朝の動きが鈍い時間帯を狙うと捕まえやすいです。
カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)が幹に入り込んでいる場合は、おがくずが出ている穴に針金を差し込んで刺殺する方法があります。
木酢液や牛乳スプレーを活用する
自然由来の資材を活用した手作りスプレーも、害虫対策に役立ちます。
化学農薬と比べて効果は穏やかですが、予防的な使用で害虫を寄せ付けにくくする効果が期待できます。
木酢液(もくさくえき)は、木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りが害虫の忌避に繋がります。
製品の指示に従って500倍から1000倍程度に水で薄め、キウイの葉の裏表にまんべんなく散布します。
土壌に散布することで、土壌中の有用な微生物を増やし、植物の成長を助ける効果も期待できます。
牛乳スプレーは、特にアブラムシやハダニのような体の小さい害虫に効果的です。牛乳を水で1:1に薄めてスプレーし、乾かします。
牛乳が乾燥する際に膜を作り、害虫を窒息させる仕組みです。
散布は晴れた日の午前中に行い、乾いた後は必ず水で洗い流してください。
洗い流さないと、牛乳が腐敗して悪臭やカビの原因になるため注意が必要です。
その他、トウガラシやニンニクを焼酎に漬け込んだものを希釈して散布する方法も、アブラムシなどの忌避効果が期待できます。
天敵を利用して害虫を減らす
害虫を食べてくれる「天敵(益虫)」を味方につけるのも、非常に有効な方法です。
農薬を使わないことで、これらの益虫が住みやすい環境を整えることができます。
これを「生物的防除」と呼びます。
キウイの害虫であるアブラムシの天敵としては、テントウムシが有名です。
テントウムシの成虫だけでなく、幼虫もたくさんのアブラムシを捕食してくれます。
また、ヒラタアブやクサカゲロウの幼虫もアブラムシを好んで食べます。
これらの天敵を畑や庭に呼び込むためには、彼らの餌となるアブラムシを完全に駆除しないこと、そして彼らが好む環境を作ることが大切です。
例えば、キウイの近くにマリーゴールドやカモミール、ミントといったハーブ類やキク科の植物を植える(コンパニオンプランツ)と、多様な虫が集まり、天敵の隠れ家や蜜源になります。
殺虫剤をむやみに使用すると、害虫だけでなく天敵も死んでしまうため、使用は最小限に留めましょう。
自然の生態系のバランスを活かして、害虫の発生を抑制する環境づくりを目指しましょう。
今日からできるキウイの害虫予防策
キウイを害虫被害から守るためには、発生してからの駆除も大切ですが、それ以上に「そもそも害虫を発生させない」という予防の視点が極めて重要です。
日々のちょっとした手入れや工夫で、害虫が寄り付きにくい環境を作り、被害のリスクを大幅に減らすことができます。
ここでは、家庭菜園の初心者でも今日からすぐに実践できる、効果的な害虫予防策を3つご紹介します。
農薬に頼る前に、まずはこれらの基本的な対策を徹底しましょう。
剪定で風通しを良くする
キウイの害虫予防において、最も基本的かつ効果的なのが「剪定」です。
葉や枝が密集して風通しが悪くなると、湿気がこもり、カイガラムシやハダニ、うどんこ病などの病害虫にとって絶好の住処となってしまいます。
定期的な剪定で、株全体の風通しと日当たりを確保することが、健康なキウイを育てる第一歩です。
キウイの主な剪定時期は、休眠期にあたる冬(12月~2月)と、生育が旺盛になる夏(7月~8月)の2回です。
- 冬剪定:この時期は、枯れた枝、他の枝と交差している枝、内側に向かって伸びる枝などを大胆に切り落とします。これにより、株の骨格が整理され、春以降の新芽が伸びるスペースが確保され、一年を通した風通しの良さの基礎が作られます。
- 夏剪定:夏場は葉が生い茂り、あっという間に密集状態になります。伸びすぎたつるや混み合った葉を間引くように剪定し、株の内部まで日光が届くようにしましょう。光が当たることで葉が健康になり、湿気が溜まりにくくなるため、病害虫の発生を抑制できます。
剪定の目安は、枝や葉の向こう側が透けて見える程度です。
風が通り抜けるイメージで、不要な枝や葉を整理してあげましょう。
これにより、害虫が隠れる場所をなくし、万が一発生した場合でも早期に発見しやすくなるというメリットもあります。
防虫ネットで物理的にガードする
カミキリムシ(テッポウムシ)やコガネムシなど、外部から飛来してくる成虫に対しては、防虫ネットを使った物理的な防御が非常に有効です。
特に、植え付けたばかりの若い木は成虫のターゲットになりやすいため、積極的に活用しましょう。
防虫ネットの使い方は、守りたい対象によって異なります。
- 株全体を覆う:まだ小さい苗木や幼木の場合は、支柱を数本立ててトンネル状にし、株全体を防虫ネットで覆います。このとき、ネットの裾に隙間ができないよう、土に埋めるか、ピンや重しでしっかりと固定することが重要です。
- 幹に巻き付ける:キウイにとって致命的な被害をもたらすカミキリムシは、主に株元の幹に卵を産み付けます。これを防ぐため、地面から高さ1mくらいまでの幹に、防虫ネットや使い古しのストッキングなどを二重に巻き付けます。産卵管を差し込めなくすることで、幼虫の侵入を未然に防ぎます。
ただし、キウイは雄花と雌花が別々の株に咲くため、実をつけるには受粉が必要です。
開花時期である5月~6月頃に株全体をネットで覆っていると、虫による受粉が妨げられてしまいます。
この期間は一時的にネットを外すか、人工授粉を行うなどの対応を忘れないようにしましょう。
こまめな観察で早期発見に努める
どんな対策をしても、害虫の発生を100%防ぐことは困難です。
そこで重要になるのが、日々の観察による「早期発見・早期対処」です。
害虫は、少数でいるうちに見つければ、手で取り除くだけで駆除できることがほとんどです。
被害が拡大し、農薬を使わなければならない事態になる前に、異常を察知する習慣をつけましょう。
観察する際は、以下のポイントを重点的にチェックしてください。
- 葉の裏:ハダニやアブラムシ、カイガラムシの幼虫など、多くの害虫は葉の裏側に潜んでいます。葉を一枚一枚めくって確認する癖をつけましょう。
- 新芽や若い枝:アブラムシは柔らかい新芽に群がります。先端部分の色がおかしくないか、ベタベタしていないかを確認します。
- 枝の分岐点:カイガラムシの成虫は、枝の分かれ目などに固まって寄生していることが多いです。
- 株元の幹:カミキリムシの幼虫(テッポウムシ)が侵入すると、おがくずのようなフン(フラス)が出てきます。株元に木くずが落ちていないか、定期的にチェックしましょう。
最低でも週に1回、できれば2~3日に1回はキウイの様子をじっくりと観察する時間を作ることが理想です。
水やりのついでにチェックするだけでも構いません。
まとめ
本記事では、キウイ栽培で直面する害虫問題について、発生原因から症状別の見分け方、主要な害虫ごとの駆除方法、そして予防策までを網羅的に解説しました。
キウイの害虫被害を最小限に抑えるための結論は、「早期発見」と「日々の予防」に尽きます。
葉のベタつきや変色、幹のおがくずといったサインを見逃さず、カイガラムシやカミキリムシなどの害虫を初期段階で特定することが重要です。
駆除には、それぞれの害虫に合わせた農薬の使用や、手で取り除く物理的防除、木酢液などを活用した方法があり、状況に応じて最適な手段を選択しましょう。
しかし、最も効果的な対策は害虫を寄せ付けない環境を維持することです。
剪定による風通しの改善や防虫ネットの活用といった予防策を日頃から実践することで、農薬の使用を減らし、健康なキウイを育てることができます。
この記事で紹介した知識を活用し、大切なキウイを害虫から守り、美味しい果実の収穫を目指してください。

