大切に育てているブドウに害虫を見つけてお困りではありませんか。
「ブドウ虫」と一括りにされがちですが、その正体はブドウスカシバやコガネムシの幼虫など様々です。
この記事を読めば、害虫の種類に応じた駆除方法から、農薬を使わない対策、確実な再発予防策まで全てが分かります。
適切な時期に正しい対策を行うことが、ブドウ虫の被害をなくすための最も効果的な方法です。
あなたのブドウを襲うブドウ虫の正体
大切に育てているブドウの元気がない、葉や幹に異変が見られる。
その原因は「ブドウ虫」と呼ばれる害虫かもしれません。
「ブドウ虫」とは、実は特定の一種類の虫を指す言葉ではなく、ブドウに被害をもたらす複数の害虫の総称として使われています。
被害の状況や場所によって、原因となっている害虫は異なります。
まずは敵の正体を正確に知ることが、効果的な駆除と対策の第一歩です。
ここでは、ブドウ栽培で特に問題となる代表的な「ブドウ虫」の種類と、その生態、被害の特徴について詳しく解説します。
ブドウ虫と呼ばれる代表的な害虫
ブドウを加害する害虫は数多く存在しますが、中でも特に被害が大きく「ブドウ虫」として警戒されているのは、幹に侵入するタイプ、根を食べるタイプ、そして葉を食害するタイプです。
それぞれの特徴を把握し、ご自身のブドウに見られる症状と照らし合わせてみましょう。
幹に侵入するブドウスカシバ
ブドウスカシバは、成虫は蜂に似た姿の蛾ですが、ブドウに深刻な被害を与えるのはその幼虫です。
幼虫はブドウの幹や太い枝の内部に食い込み、樹液や養分が通る重要な部分(形成層)を食い荒らします。
被害の最も分かりやすいサインは、幹や枝から排出される、木くずとフンが混じった茶色いヤニ状の塊です。
これを「虫糞(ちゅうふん)」と呼びます。
この虫糞が地面に落ちていたり、幹に付着していたりしたら、ブドウスカシバの幼虫が内部にいる可能性が非常に高いです。
被害が進行すると、食害された部分から先への養分供給が断たれ、枝全体が枯れてしまったり、樹の勢いが著しく衰えたりする原因となります。
根を食害するコガネムシの幼虫
地上部には特に異常が見られないのに、ブドウの生育が急に悪くなったり、葉が黄色くなってしおれたりする場合、土の中にいるコガネムシの幼虫が原因かもしれません。
ドウガネブイブイやマメコガネといったコガネムシ類の成虫は夏に葉を食害しますが、より深刻なのは土中で越冬する幼虫による根の食害です。
幼虫はブドウの細い根から太い根までかじり、水分や養分を吸収する大切な器官を傷つけます。
被害がひどくなると、株全体がぐらついたり、最終的には枯死に至ることもあります。
株元の土を少し掘り返してみて、白く丸まったC字型の幼虫が見つかれば、コガネムシの幼虫による被害で間違いありません。
葉を巻くハマキムシ類
ブドウの葉が不自然に巻かれていたり、数枚の葉が糸で綴り合わされていたりしたら、それはハマキムシ類の幼虫の仕業です。
ハマキムシは蛾の仲間で、その名の通り、幼虫が糸を吐いて葉を巻いたり折り畳んだりして巣を作り、その中で葉の内部を食害します。食害された葉は光合成ができなくなり、樹全体の生育に影響を与えます。
また、種類によっては新梢の先端や花穂、さらにはブドウの果実まで食害することがあり、収穫物の品質低下や病気の発生原因にも繋がります。
代表的な種としてチャハマキなどが知られていますが、複数の種類が発生するため、注意が必要です。
ブドウ虫の発生時期と被害の見つけ方
害虫を効果的に駆除・予防するためには、それぞれの活動時期を知り、被害を早期に発見することが重要です。
ここでは、代表的なブドウ虫の年間の活動サイクルと、被害を見つけるためのチェックポイントを解説します。
ブドウスカシバ
成虫は主に6月〜8月頃に現れ、ブドウの幹や枝の樹皮の割れ目などに産卵します。
孵化した幼虫はすぐに幹の内部に侵入し、そのまま越冬して翌年の春まで食害を続けます。
春から初夏にかけて、幹や枝の付け根からヤニ状の虫糞が出ていないか、注意深く観察しましょう。
特定の枝だけ生育が悪い場合も、内部に幼虫がいるサインかもしれません。
コガネムシの幼虫
成虫は初夏から夏にかけて発生し、土の中に産卵します。
孵化した幼虫は秋にかけて根を盛んに食害し、そのまま土中で越冬。春になると再び活動を始めます。
夏から秋にかけて、原因不明でブドウの元気がなくなった場合は、根の被害を疑いましょう。
株元に成虫の発生を示す小さな穴がないか、株がぐらつかないかを確認するのも有効です。
ハマキムシ類
種類によって異なりますが、多くは春から秋にかけて年に2〜4回発生を繰り返します。
特に新芽が伸びる春先や、葉が生い茂る夏に被害が目立ちやすくなります。
定期的にブドウの葉を観察し、巻かれた葉や綴られた葉がないかチェックする習慣をつけましょう。
新芽の先端が食べられていたり、葉がかすり状に白っぽくなっていたりするのも初期のサインです。
確実なブドウ虫の駆除なら害虫駆除業者が最適!
ご自身での対策が難しい、被害が広範囲に及んでいる、あるいは忙しくて駆除作業に時間を割けない。
そんな時は、害虫駆除のプロフェッショナルである専門業者に依頼するのが最も確実で安心な解決策です。
ブドウの木を健康に保ち、美味しい果実を収穫するためにも、専門家の力を借りるという選択肢をぜひ検討してみてください。
なぜ害虫駆除業者に依頼するべきなのか?そのメリット
「業者に頼むと費用がかかる」と躊躇される方もいるかもしれません。
しかし、専門業者への依頼には、費用以上の大きなメリットが存在します。
自分で行う駆除作業との違いを具体的に見ていきましょう。
専門的な知識と経験による的確な診断
ひとくちに「ブドウ虫」と言っても、ブドウスカシバの幼虫、コガネムシの幼虫、ハマキムシ類など、その正体は様々です。
プロの業者は、被害の状況やフン、食害痕などから害虫の種類を正確に特定します。
そして、それぞれの生態や活動時期に合わせた最も効果的な駆除プランを立案・実行してくれるため、素人判断による駆除の失敗や、対策の遅れを防ぐことができます。
プロ仕様の薬剤と機材による高い駆除効果
害虫駆除業者は、ホームセンターなどでは手に入らないプロ仕様の高性能な薬剤や機材を保有しています。
例えば、木の幹の内部深くに潜むブドウスカシバの幼虫に対して、特殊なノズルを使って薬剤を的確に注入したり、高所に茂った葉の裏まで薬剤を届かせるための動力噴霧器を使用したりと、個人では難しいレベルの徹底した駆除が可能です。
これにより、害虫の根絶を目指すことができます。
安全性の確保と作業の手間からの解放
農薬の散布は、正しい知識のもとで適切な保護具を着用して行わないと、人体やペット、周辺環境に悪影響を及ぼす危険性があります。
専門業者は、農薬取締法などの関連法規を遵守し、安全管理を徹底した上で作業を行います。
また、薬剤の選定から散布、後片付けまで全てを任せられるため、ご自身で作業する時間や労力、精神的な負担から解放される点も大きなメリットです。
再発防止のアドバイスと保証制度
優良な業者は、駆除作業をしたら終わりではありません。
なぜ害虫が発生したのかという原因を突き止め、今後の再発を防ぐための具体的なアドバイス(適切な剪定方法、土壌管理、清掃のポイントなど)を提供してくれます。
また、業者によっては作業後の保証期間を設けている場合もあり、万が一期間内に再発した際には無償で対応してもらえるなど、長期的な安心感を得られます。
害虫駆除業者を選ぶ際のチェックポイント
いざ業者に依頼しようと思っても、どこに頼めば良いか迷ってしまうものです。
大切なブドウの木を任せるのですから、信頼できる優良な業者を慎重に選びましょう。
ここでは、業者選定で失敗しないための重要なチェックポイントをご紹介します。
農作物(ブドウ)への対応実績
ゴキブリやハチの駆除を専門とする業者と、庭木や農作物の害虫を得意とする業者とでは、知識や技術が異なります。
特にブドウ栽培における害虫駆除の実績が豊富かどうかは重要なポイントです。
業者の公式サイトで、庭木や果樹の駆除に関する施工事例が紹介されているかを確認しましょう。
明確な料金体系と見積もりの提示
問い合わせの際に、料金体系について丁寧に説明してくれるかを確認しましょう。
優良な業者は、必ず作業前に現地調査を行い、被害状況を正確に把握した上で詳細な見積書を提示します。
見積書に「作業一式」としか書かれていない場合は要注意です。
どのような作業にいくらかかるのか、薬剤費や出張費などの内訳が明確に記載されているかを確認し、追加料金が発生する可能性についても事前に質問しておきましょう。
必要な許認可や資格の有無
害虫駆除業を営む上で必須の資格は多くありませんが、「防除作業監督者」や「農薬管理指導士」といった資格を保有しているスタッフが在籍している業者は、専門知識が豊富で信頼性が高いと言えます。
また、万が一の物損事故などに備え、損害賠償責任保険に加入しているかどうかも確認しておくとより安心です。こうした情報は、公益社団法人日本ペストコントロール協会のウェブサイトなどで地域の優良業者を探す際の参考にもなります。
口コミや評判の確認
実際にその業者を利用した人の声は、非常に参考になります。
公式サイトのお客様の声だけでなく、Googleマップのレビューや地域の情報サイトなど、第三者の客観的な口コミや評判もチェックしてみましょう。
対応の丁寧さや作業の質、料金の納得感など、リアルな評価を確認することで、悪質な業者を避けることができます。
害虫駆除業者に依頼する際の流れと費用相場
専門業者への依頼が初めての方でもスムーズに進められるよう、一般的な依頼の流れと費用の目安について解説します。
問い合わせから作業完了までの一般的な流れ
多くの業者では、以下のようなステップで作業が進みます。
- 問い合わせ・相談:電話やウェブサイトのフォームから、被害の状況や困っていることを伝えます。この段階で、おおよその料金や対応エリアを確認できます。
- 現地調査・見積もり:専門スタッフが実際にブドウの木の状態を確認し、害虫の種類や被害範囲を診断します。その結果に基づき、最適な駆除方法と詳細な見積書が提示されます。
- 契約:見積もりの内容に納得できたら、正式に契約を結びます。作業日時や内容を改めて確認します。
- 駆除作業の実施:事前に打ち合わせた日時に、専門スタッフが駆除作業を行います。近隣への配慮なども含め、安全に作業を進めてくれます。
- 作業報告・支払い:作業完了後、どのような作業を行ったかの報告を受け、問題がなければ料金を支払います。
- アフターフォロー:保証制度がある場合は、保証書を受け取ります。再発防止のアドバイスなどもこの時に確認しましょう。
ブドウ虫駆除の費用相場
ブドウ虫の駆除にかかる費用は、被害の規模、ブドウの木の本数や大きさ、使用する薬剤の種類、作業の難易度などによって大きく変動します。
あくまで一般的な目安ですが、個人の庭木1本あたりであれば、20,000円~50,000円程度が相場となることが多いようです。
ただし、これは基本的な作業の場合であり、被害が深刻で複数回の作業が必要な場合や、高所作業車など特殊な機材が必要な場合は、費用が加算される可能性があります。
正確な料金を知るためには、必ず複数の業者から相見積もりを取り、料金とサービス内容を比較検討することをおすすめします。
今すぐできるブドウ虫の駆除方法
ブドウの木にブドウ虫の被害を見つけたら、被害が拡大する前に迅速な対応が必要です。
駆除方法は、被害の状況や栽培環境(家庭菜園か、大規模な果樹園かなど)によって異なります。
ここでは、ご自身の状況に合わせて選べるよう、「手作業」「農薬」「農薬を使わない方法」の3つのアプローチから具体的な駆除方法を解説します。
手作業による物理的な駆除
発生した害虫がまだ少数であったり、農薬を使いたくない家庭菜園であったりする場合に最も手軽で確実な方法です。
被害箇所を直接確認しながら、一匹ずつ取り除いていきましょう。
幼虫の捕殺と被害箇所の除去
ブドウ虫の多くは、幼虫の時期に最も大きな食害をもたらします。
そのため、幼虫を見つけ次第捕殺することが被害を最小限に抑える鍵となります。
ブドウスカシバの幼虫駆除:幹や枝から「フラス」と呼ばれる木くずと糞が混ざったものが出ていたら、その内部に幼虫が潜んでいます。
細い針金やキリなどを穴に差し込み、幼虫を掻き出すか刺殺します。
被害が深刻で穴が大きくなっている場合は、ナイフなどで樹皮を少し削って幼虫を直接取り除いてください。
駆除後は、被害が広がらないように癒合剤を塗布して傷口を保護すると良いでしょう。
被害がひどい枝は、思い切って剪定し、適切に処分することも重要です。
コガネムシの幼虫駆除:株元の土壌中に生息しているため、発見が難しい害虫です。
ブドウの生育が悪い、葉が萎れるなどの症状が見られたら、株元の土をスコップなどで慎重に掘り返してみてください。
白色で丸まった幼虫を見つけたら、すぐに捕殺します。
ハマキムシ類の幼虫駆除:新芽や葉が糸で綴られていたり、巻かれていたりしたら、その中にハマキムシの幼虫がいます。
葉ごと指で押しつぶすか、被害のある葉を摘み取って袋に入れ、しっかりと口を縛って処分しましょう。
放置すると葉の中から出てきてしまうため、必ず密閉して処分することが大切です。
農薬を使った確実な駆除
害虫が大量に発生してしまい、手作業での駆除が追いつかない場合には、農薬の使用が効果的です。
ブドウに使用できる登録農薬を選び、使用方法を必ず守って正しく散布してください。
ブドウ栽培で使えるおすすめの殺虫剤
ブドウに登録があり、標的とする害虫に効果のある殺虫剤を選びます。
購入前には必ずラベルを確認し、対象害虫に「ブドウスカシバ」「ハマキムシ類」「コガネムシ類幼虫」などの記載があるか確かめましょう。
- ブドウスカシバ向け: 幼虫が幹の内部に侵入するため、薬剤が浸透しやすい浸透移行性の殺虫剤が有効です。「スミチオン乳剤」や「モスピラン顆粒水溶剤」などが代表的です。成虫の発生時期に幹や主枝に散布することで、産み付けられた卵から孵化した幼虫が樹皮を食い破って侵入するのを防ぎます。
- ハマキムシ類向け: 若い幼虫に対して効果が高い薬剤が多く、「プレバソンフロアブル5」や「フェニックス顆粒水和剤」などがあります。新芽が出始める時期や、葉を巻く被害が見え始めた初期段階での散布が効果的です。
- コガネムシ幼虫向け: 土壌中に生息する幼虫には、「ダイアジノン粒剤5」などの土壌処理剤が有効です。株元の土壌に混ぜ込むことで、根を食べる幼虫を駆除します。
農薬を散布する時期と正しい使い方
農薬は、適切な時期に正しい方法で使用して初めて効果を発揮し、安全性も確保されます。
以下の点を必ず守ってください。
- 説明書(ラベル)の熟読: 使用前には必ず農薬のラベルを読み、希釈倍率、使用時期(収穫何日前まで使えるか)、使用回数の制限などを確認し、厳守します。
- 適切な散布タイミング: 害虫の活動が活発になる時期や、薬剤が効きやすい幼虫の若齢期を狙って散布します。一般的に、風のない早朝や夕方が散布に適しています。
- 安全な服装: 農薬散布時は、マスク、保護メガネ、農薬用手袋、長袖・長ズボンの作業着を着用し、薬剤が皮膚に付着したり、吸い込んだりしないように体を保護します。
- 散布方法: 葉の裏や幹など、害虫が潜んでいる場所に薬剤がまんべんなくかかるように丁寧に散布します。
家庭菜園でも安心 農薬を使わない駆除
化学合成農薬に頼りたくない方や、お子様やペットがいるご家庭では、自然由来の資材を活用した方法がおすすめです。
化学農薬ほどの即効性や殺虫力はありませんが、害虫を寄せ付けにくくする忌避効果や、発生を抑制する効果が期待できます。
木酢液やニームオイルの活用法
これらの資材は、殺虫ではなく「忌避(きひ)」、つまり害虫が嫌がる環境を作ることを目的として使用します。
病害虫が発生する前の予防的な散布が基本です。
木酢液(もくさくえき):木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の燻製のような香りがします。
この香りを害虫が嫌うため、忌避効果が期待できます。
で200~500倍程度に薄め、定期的に葉面や幹に散布します。
土壌に散布することで、土壌中の有用な微生物の活動を助ける効果も期待できます。
ニームオイル:「ニーム」というインド原産の樹木の種子から抽出されるオイルです。
害虫の摂食意欲を減退させたり、脱皮や繁殖を阻害したりする効果があるとされています。
水で薄めて使用しますが、油分なので水と混ざりにくいため、少量の展着剤(または食器用洗剤を1、2滴)を加えてよく撹拌してから散布します。
定期的な散布で、害虫が寄り付きにくい環境を維持します。
フェロモントラップによる成虫対策
特定の害虫の成虫(オス)だけを誘引して捕獲する、環境にやさしい対策方法です。
交尾を阻害することで、次世代の幼虫の発生数を減らすことができます。
ブドウスカシバや一部のハマキムシ類には、それぞれの性フェロモンを利用した市販のトラップがあります。
成虫が発生する時期(ブドウスカシバなら初夏から夏)に合わせてブドウ棚や支柱に設置します。
トラップで捕獲された虫の数を数えることで、害虫の発生状況を知るためのモニタリングツールとしても非常に有効です。
ただし、大量発生している場合はトラップだけでの完全な駆除は難しいため、他の駆除方法と組み合わせる必要があります。
ブドウ虫の再発を防ぐ徹底予防策
ブドウ虫の被害は一度発生すると、翌年以降も繰り返されることが少なくありません。
薬剤による駆除も重要ですが、それ以上に大切なのが、害虫が寄り付きにくい環境を作り、被害を未然に防ぐ「予防」です。
ここでは、ブドウ虫の再発を防ぐための徹底した予防策を、誰でも実践できるよう具体的に解説します。
ブドウ虫を寄せ付けない環境づくり
害虫の発生を根本から抑えるには、ブドウの樹そのものと、その周辺環境を健全に保つことが最も効果的です。
日々の栽培管理を見直すことで、農薬に頼らずとも害虫の発生リスクを大幅に減らすことができます。
適切な剪定で風通しを改善する
枝や葉が密集して生い茂った場所は、ブドウ虫にとって絶好の隠れ家となります。
特に、葉を巻いて食害するハマキムシ類は、風通しが悪く湿気の多い環境を好みます。
適切な剪定を行い、樹全体の風通しと日当たりを改善しましょう。
冬に行う「冬季剪定」では、枯れ枝や混み合った枝、内側に向かって伸びる枝などを根本から切り落とし、樹の骨格を整えます。
夏には、伸びすぎた新しい梢(新梢)の先端を摘み取る「摘心」や、不要な新梢を間引く作業を行い、葉が重なり合わないように管理します。
これにより、害虫が潜む場所をなくすだけでなく、日光が内部まで届くことで樹が健康に育ち、病気の予防にも繋がります。
また、風通しが良ければ、万が一農薬を散布する際にも薬液が隅々まで行き渡りやすくなります。
株元の除草と清掃を徹底する
ブドウの株元に生い茂る雑草は、害虫の温床です。
特に、土壌中に生息するコガネムシの幼虫は、成虫が雑草の根際に産卵することで発生源となるケースが多く見られます。
定期的に株元の除草を行い、成虫の産卵場所をなくしましょう。
また、秋に落ちた葉や剪定した枝をそのまま放置しておくことも危険です。
これらは、ブドウスカシバの幼虫やハマキムシの蛹(さなぎ)などが越冬するための格好の隠れ家になってしまいます。
収穫後から冬にかけては、園内を清潔に保つことを心がけ、落ち葉や枯れ枝はこまめに集めて処分してください。
古い樹皮(粗皮)を剥ぎ取る「粗皮削り」も、樹皮の隙間で越冬する害虫を除去するのに非常に効果的な作業です。
物理的に侵入を防ぐ予防方法
環境整備と並行して、物理的なバリアで害虫の侵入そのものを防ぐ方法も有効です。
成虫の飛来や産卵を直接阻止することで、被害を最小限に食い止めることができます。
防虫ネットや袋かけの正しい使い方
ブドウスカシバやハマキムシ類の成虫が飛来してくるのを防ぐには、樹全体を防虫ネットで覆うのが最も確実な方法の一つです。
特に家庭菜園など小規模な栽培では、棚全体を細かい目合い(1mm以下が目安)のネットで覆うことで、多くの飛来害虫の侵入を防ぐことができます。
ネットを設置する際は、害虫が侵入できないよう、裾の部分に隙間ができないようにしっかりと地面に固定することが重要です。
果房を守るためには「袋かけ」が非常に有効です。
摘粒作業が終わった後、果粒が小豆大くらいに育ったタイミングで、果房一つひとつに専用の袋をかけます。
これにより、ハマキムシ類や蛾の仲間が果実に産卵するのを防ぐだけでなく、雨による病気の発生や鳥による食害も同時に防ぐことができます。
袋かけのタイミングが遅れると、すでに産卵されている可能性があるため注意しましょう。
幹を保護してブドウスカシバの産卵を防ぐ
ブドウの幹に侵入するブドウスカシバは、成虫が主幹や古い枝の樹皮の割れ目に卵を産み付けます。
この産卵行動を防ぐことが、最も重要な予防策となります。
成虫が発生する初夏から夏にかけて、ブドウの主幹や太い枝に、不織布や寒冷紗などを巻き付けて物理的に産卵場所を覆い隠す方法があります。
また、ブドウスカシバの産卵を防止するために開発された専用の塗布剤(ガッテン乳剤など)を幹に塗布することも効果的です。
これらの対策は、産卵時期に合わせて行うことで、翌年の幼虫による被害を大幅に減らすことができます。
季節別 ブドウ虫の年間対策スケジュール
ブドウ虫の被害を最小限に抑えるには、ブドウと害虫の生態サイクルに合わせた年間を通じた管理が不可欠です。
ここでは、季節ごとに行うべき具体的な予防と駆除の作業をスケジュールとしてまとめました。
年間計画を立て、適切な時期に適切な対策を講じることで、大切なブドウを守りましょう。
春に行うべき予防と駆除作業
春は、越冬していた害虫が活動を始め、ブドウが新芽を出す重要な時期です。
この時期の初期防除が、一年間の被害を大きく左右します。
3月〜4月(発芽前〜発芽期)
越冬した害虫が動き出す前に先手を打つことが重要です。休眠期を終え、樹液が流れ始めるこの時期は、越冬害虫の駆除に最適なタイミングです。
- 休眠期の薬剤散布(マシン油乳剤): 3月上旬頃までに、マシン油乳剤を散布します。これは木の表面で越冬しているカイガラムシ類やハダニ類の卵に効果があり、ブドウスカシバやハマキムシ類の越冬場所を減らす間接的な効果も期待できます。
- 粗皮剥ぎと剪定枝の処理: 芽が動き出す前までに、幹の古い樹皮(粗皮)を剥ぎ取り、その場で処分します。粗皮の下はハマキムシ類などが越冬する絶好の隠れ家です。冬の剪定で出た枝も、害虫の越冬場所となるため、速やかに圃場の外に持ち出し処分しましょう。
- ブドウスカシバの幼虫駆除: 暖かくなると、幹の中で越冬していたブドウスカシバの幼虫が活動を再開し、フラス(木くずと糞が混じったもの)を排出し始めます。フラスを見つけたら、穴に針金を差し込んで幼虫を刺殺します。
5月(展葉期〜開花期)
新芽や若葉が展開し、害虫の格好の餌食となる時期です。定期的な観察と迅速な対応が求められます。
- ハマキムシ類の早期発見と駆除: 新芽や葉が巻かれていたり、食害されたりしていないか注意深く観察します。被害が少ないうちは、見つけ次第、葉ごと捕殺するのが最も効果的です。被害が広がるようであれば、適用のある殺虫剤の散布を検討します。
- コガネムシ成虫の飛来対策: コガネムシの成虫が飛来し始める時期です。特に夕方から夜間にかけて活動するため、防虫ネットを設置したり、飛来数が多い場合は夜間に捕殺したりするなどの対策を始めます。
- 薬剤散布の計画: 開花期はミツバチなどの訪花昆虫の活動時期と重なるため、農薬散布には細心の注意が必要です。使用する農薬が訪花昆虫に影響を与えないか確認し、散布時間帯(早朝や夕方)を選ぶなどの配慮をしましょう。
夏に行うべき予防と駆除作業
夏は気温の上昇とともに害虫の活動が最も活発になる季節です。
ブドウの果実が成長する大切な時期でもあり、徹底した防除が収穫の質を決定づけます。
6月〜7月(開花後〜果実肥大期)
梅雨と重なり、病害虫が発生しやすい条件が揃います。
特に、ブドウスカシバの成虫が発生し、産卵する重要な時期です。
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- ブドウスカシバ成虫対策: 成虫は6月頃から発生し、幹や枝の分岐部に産卵します。フェロモントラップを設置して発生状況を把握し、産卵を防ぎましょう。交信攪乱剤(コンフューザーVなど)を設置するのも非常に有効な予防策です。成虫を見かけたら捕殺します。
- ハマキムシ類の防除: 世代を繰り返し、個体数が増加します。新梢や果房に被害が及ぶため、定期的な観察と薬剤散布が必要です。袋かけをする場合は、その前に徹底的に防除しておくことが重要です。
- 袋かけの実施: 病害虫や鳥の被害から果実を守るため、梅雨明けまでを目安に袋かけを行います。袋をかける前に、果房に害虫が付着していないか十分に確認しましょう。
8月(果実成熟期)
収穫を目前に控え、薬剤の使用には特に注意が必要な時期です。
物理的な防除を中心に、最後まで気を抜かずに管理します。
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- コガネムシ成虫の駆除:成虫による葉や果実の食害が続きます。数が少ない場合は手で捕殺するのが最も安全です。夜間に光に集まる習性を利用したライトトラップも有効です。
- 圃場の見回り強化:袋の中や葉の裏などをこまめにチェックし、害虫の発生を見逃さないようにします。特にブドウスカシバの新しい食入孔からフラスが出ていないか、幹を注意深く観察しましょう。
- 農薬使用の注意:収穫前まで使用できる農薬もありますが、使用時期や回数の制限(収穫前日数)を厳守してください。収穫期が近い場合は、木酢液や食酢など、収穫直前まで使える資材の活用を検討します。
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秋から冬の越冬対策
収穫後の秋から冬にかけての管理は、翌年の害虫発生数を減らすための最も重要な作業です。
この時期にどれだけ越冬する害虫を減らせるかで、春からの労力が大きく変わります。
9月〜11月(収穫後〜落葉期)
収穫を終えて気が緩みがちですが、来年に向けた大切な準備期間です。
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- 残渣の徹底処理:収穫後に圃内に残った被害果、巻き葉、地面に落ちた葉などをきれいに集めて処分します。これらはハマキムシ類などの越冬場所となるため、圃場の外に持ち出して適切に処理することが重要です。
- 株元の除草と浅耕:株元の雑草は害虫の隠れ家になります。きれいに除草し、土壌の表面を軽く耕す(浅耕)ことで、土中で蛹になろうとするコガネムシの幼虫などに物理的なダメージを与え、越冬させにくくします。
12月〜2月(休眠期)
ブドウが休眠しているこの時期は、樹にダメージを与えにくく、害虫駆除作業に集中できる絶好の機会です。
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- 徹底した粗皮剥ぎ:幹や古い枝のゴツゴツした樹皮を、ワイヤーブラシや専用のヘラで丁寧に剥ぎ取ります。樹皮の隙間で越冬しているブドウスカシバの幼虫、ハマキムシ類の蛹、カイガラムシ類などを物理的に除去できます。剥ぎ取った樹皮は必ず集めて焼却処分してください。
- 冬期剪定と被害枝の除去:適切な剪定は、風通しと日当たりを改善し、翌年の病害虫の発生を抑制します。このとき、ブドウスカシバの被害を受けた枝や、不自然に膨らんだ部分があれば、思い切って切り落とし、内部の幼虫ごと処分します。
- 休眠期の薬剤散布(石灰硫黄合剤):粗皮剥ぎと剪定が終わった後、石灰硫黄合剤を散布します。これは殺菌・殺虫効果が高く、樹皮の隙間で越冬している多くの病害虫に効果を発揮します。ただし、薬害が出やすいため、必ずブドウが完全に休眠している時期(1月〜2月上旬)に使用し、規定の濃度を厳守してください。
まとめ
ブドウを害するブドウ虫には、ブドウスカシバやコガネムシの幼虫など複数の種類がいます。
大切なのは、害虫の種類と発生時期を見極め、状況に応じた適切な駆除を行うことです。
しかし、一度きりの駆除では再発のリスクが残ります。
最も重要な結論は、剪定や清掃による環境改善、防虫ネットなどの物理的対策を組み合わせ、年間を通じて計画的に予防することです。
これらの継続的な対策こそが、あなたのブドウをブドウ虫から守る最善の方法と言えるでしょう。