グンバイムシ 駆除

大切なツツジや庭木の葉が、白くかすり状になっていませんか?その被害は、繁殖力の強い害虫「グンバイムシ」の仕業かもしれません。

この記事では、グンバイムシの見分け方から、農薬を使わない安全な方法、効果的な市販薬、再発させない予防策まで全て解説します。

グンバイムシの駆除は、被害が広がる前の早期発見と、幼虫が活動する時期の対策が最も重要です。

正しい知識で、大切な植物を害虫から守りましょう。

目次

もしかしてグンバイムシ?被害の症状と見分け方

大切に育てている庭木や草花の葉に、見慣れない白い斑点が広がっていたら、それはグンバイムシの被害かもしれません。

グンバイムシは体長わずか数ミリの小さな害虫ですが、繁殖力が強く、放置すると植物の景観を著しく損ない、生育を妨げる原因となります。

早期発見・早期駆除が重要なため、まずは被害のサインを正確に見分ける方法を知っておきましょう。

葉が白くかすり状になる被害サイン

グンバイムシの最も代表的な被害症状は、葉の表面に現れる「かすり状の白い斑点」です。

これは、グンバイムシが葉の裏側から口針を突き刺し、葉の組織内部の汁を吸うこと(吸汁)で起こります。

吸汁された部分は葉緑素が抜けてしまい、白く色あせたように見えます。

被害の初期段階では、針で突いたような小さな白い点がポツポツと現れる程度ですが、被害が進行すると点と点がつながって広がり、やがて葉全体が白っぽく変色してしまいます。

こうなると植物は光合成を十分に行えなくなり、生育不良に陥ったり、ひどい場合には葉が枯れ落ちたりすることもあります。

特にツツジやサツキでは、この被害によって美しい花付きが悪くなることも少なくありません。

葉の裏にある黒い点やベタベタはフンや排泄物

葉の表面が白くなっているのを見つけたら、必ず葉の裏側を確認してください。

もしそこに「黒いインクを飛ばしたような小さな点々」が付着していたら、グンバイムシがいる決定的な証拠です。

この黒い点の正体は、グンバイムシのフン(排泄物)です。

また、フンとあわせて葉の裏がベタベタしていることもあります。

このベタつきは、排泄物に含まれる糖分などが原因で、カビの一種である「すす病」を誘発する原因にもなります。

すす病が発生すると、葉の表面が黒いすすで覆われたようになり、光合成をさらに妨げてしまうため、二次的な被害にも注意が必要です。

葉の白いかすり症状と、裏側の黒いフン、この2つがグンバイムシ被害を見分ける重要なポイントです。

グンバイムシの成虫と幼虫の見た目と生態

グンバイムシは、成虫と幼虫の両方が植物に被害を与えます。

それぞれの特徴を知っておくと、発見しやすくなります。

成虫の見た目と生態

成虫の体長は2mm~5mm程度で、名前の由来となった「軍配」のような、レース状の美しい透明な翅(はね)を持っているのが最大の特徴です。

体は平たく、色は種類によって褐色や黒っぽいものが多いです。

成虫は翅を使って移動することができ、被害を拡大させる原因となります。

主に春から秋にかけて活動し、葉の裏に産卵します。

冬になると、多くは成虫の姿で落ち葉の下や樹皮の隙間などで越冬し、翌春の発生源となります。

幼虫の見た目と生態

孵化したばかりの幼虫は非常に小さく、翅はありません。体にはトゲ状の突起が多数あり、色は淡い黄色や黒っぽい色をしています。

脱皮を繰り返しながら成長し、成虫と同様に葉の裏に群がって吸汁加害します。

成虫よりも移動範囲が狭いため、特定の葉や枝に集中して発生する傾向があります。

被害にあいやすい植物の種類一覧

グンバイムシは、種類によって好んで寄生する植物(寄主植物)がある程度決まっています。

これを「寄主特異性」と呼びます。ご自身の庭にある植物が被害にあいやすい種類かどうか、あらかじめ確認しておきましょう。

ツツジ・サツキ・シャクナゲ

日本で最もよく見られるグンバイムシ被害は、「ツツジグンバイ」によるものです。

その名の通り、ツツジ、サツキ、シャクナゲといったツツジ科の植物に集中的に寄生します。

これらの庭木は多くのご家庭で植えられているため、被害報告が最も多い例です。

開花時期の景観を損なうだけでなく、株そのものを弱らせてしまうため、特に注意が必要です。

プラタナス・アセビ・フジなど

ツツジ類以外にも、多くの植物がグンバイムシの被害を受けます。

代表的なものとして、以下のような組み合わせが知られています。

  • プラタナスグンバイ:プラタナス(スズカケノキ)。街路樹として植えられていることが多く、夏場に葉が白化しているのをよく見かけます。
  • ナシグンバイ:ナシ、リンゴ、モモ、カイドウなどバラ科の果樹。果実の品質にも影響を与えることがあります。
  • アセビグンバイ:アセビ。
  • フジグンバイ:フジ。
  • キクグンバイ:キク、ゴボウ、ヨモギなどキク科の植物。
  • アワダチソウグンバイ:セイタカアワダチソウが主な寄主ですが、ヒマワリやサツマイモなどにも被害を及ぼすことがあります。

このように、グンバイムシは庭木、果樹、草花、野菜まで、非常に広範囲の植物に被害を及ぼす害虫です。

グンバイムシ駆除に最適な時期はいつ?

グンバイムシの駆除を成功させるためには、「いつ作業を行うか」というタイミングが非常に重要です。

グンバイムシの活動サイクルを理解し、最も効果的な時期を狙って対策を講じることで、最小限の手間で最大の効果を得ることができます。

ここでは、グンバイムシの発生時期と、駆除に最適なタイミングについて詳しく解説します。

グンバイムシの発生時期と活動サイクル

グンバイムシの活動は気温と密接に関係しており、1年を通したライフサイクルが存在します。

このサイクルを知ることが、的確な防除の第一歩です。

一般的に、グンバイムシは成虫の姿で冬を越します。

主な越冬場所は、落ち葉の下や樹皮の隙間、雑草の根元など、寒さをしのげる場所です。

春になり気温が上昇し始めると(4月頃)、越冬していた成虫が活動を再開し、植物の葉裏に移動して産卵を始めます。

卵は約1〜2週間で孵化し、幼虫になります。幼虫は脱皮を繰り返しながら約2〜3週間で成虫へと成長します。

この「卵→幼虫→成虫」というサイクルは約1ヶ月で完了し、暖かい時期には年に数回(地域や気候によりますが3〜5回程度)世代を繰り返します。

特に気温が高く乾燥しやすい7月〜9月はグンバイムシの活動が最も活発になり、爆発的に増殖して被害が深刻化する傾向があります。

秋になり気温が下がってくると活動は鈍化し、10月下旬から11月頃には成虫が越冬準備に入ります。

効果的な駆除のタイミングは幼虫が多い5月から7月

グンバイムシの駆除に最も効果的な時期は、越冬から目覚めた成虫が産んだ第一世代の幼虫が多く発生する「5月から7月」です。

この時期を狙うべき理由はいくつかあります。

  • 幼虫は移動範囲が狭い:成虫は翅(はね)を使って飛んで移動できますが、幼虫は移動能力が低く、孵化した葉の裏に集団で固まっていることが多いため、一網打尽にしやすいです。
  • 薬剤への抵抗力が弱い:一般的に、幼虫は成虫よりも薬剤に対する抵抗力が弱く、殺虫剤の効果が出やすいとされています。
  • 繁殖を防ぐことができる:幼虫の段階で駆除することで、成虫になって産卵するのを防げます。これにより、夏以降の大量発生を未然に食い止めることが可能です。

多くの殺虫剤は卵には効果がないため、一度の駆除で安心せず、卵が孵化するタイミングを見越して対策を講じることが重要です。

例えば、薬剤を散布する場合は、1〜2週間ほど間隔をあけて2〜3回行うと、次々と孵化してくる幼虫を効率的に駆除できます。

もちろん、被害が拡大した夏以降でも駆除は可能ですが、個体数が増えすぎているため、より多くの手間と薬剤が必要になります。

被害を最小限に抑えるためにも、春先の定期的な観察を怠らず、幼虫が発生し始める5月から7月の間に集中的に対策を行いましょう。

グンバイムシは害虫駆除業者が最適?

グンバイムシの被害が広範囲に及んでいたり、高木に大量発生していたりする場合、自分での駆除には限界があります。

そんなとき、頼りになるのが害虫駆除の専門業者です。

しかし、費用がかかるため、依頼すべきか迷う方も多いでしょう。

ここでは、業者に依頼するメリット・デメリットから、費用相場、信頼できる業者の選び方までを詳しく解説します。

ご自身の状況と照らし合わせて、最適な判断を下すための参考にしてください。

害虫駆除業者に依頼するメリット

専門業者に依頼することには、自分で駆除するのとは比較にならないほどのメリットがあります。

特に、確実性と安全性を重視する方には最適な選択肢と言えるでしょう。

メリット1:高い駆除効果と再発防止

最大のメリットは、その確実性です。プロはグンバイムシの生態を熟知しており、発生状況や植物の種類に応じて、最も効果的な薬剤と方法を選定します。

市販されていない専門的な薬剤を使用することもあり、成虫だけでなく、卵や幼虫まで徹底的に駆除することが可能です

さらに、今後の発生を抑えるための予防策についても的確なアドバイスや施工を期待できます。

メリット2:手間と時間の節約

薬剤の選定、購入、散布準備、後片付けなど、自分で駆除を行うには多くの手間と時間がかかります。

特に、忙しい方や広範囲の駆除が必要な場合、その負担は相当なものです。

業者に依頼すれば、これらの作業をすべて任せることができ、貴重な時間を有効に活用できます。

メリット3:高所作業などの安全性確保

プラタナスや高くなったツツジなど、脚立を使っても薬剤が届かないような高木にグンバイムシが発生した場合、自力での駆除は非常に危険です。

落下事故のリスクはもちろん、薬剤をうまく散布できない可能性もあります。

専門業者は高所作業車などの専用機材と技術を持っており、安全かつ確実に作業を行ってくれます。

メリット4:薬剤使用の安全性

小さなお子様やペットがいるご家庭では、殺虫剤の使用に不安を感じる方も少なくありません。

専門業者は、薬剤の知識が豊富で、人やペット、周辺環境への影響を最小限に抑える安全な方法で散布を行います。

事前に薬剤の安全性について詳しく説明してくれるため、安心して任せることができます。

害虫駆除業者に依頼するデメリット

多くのメリットがある一方で、当然ながらデメリットも存在します。

依頼を決める前に、デメリットもしっかりと把握しておきましょう。

デメリット1:費用がかかる

最も大きなデメリットは費用です。

自分で駆除する場合、かかる費用は薬剤代程度ですが、業者に依頼すると人件費や技術料、出張費などが加わるため、数万円単位の出費になることもあります。

被害の規模や樹木の本数によっては、高額になる可能性も考慮しておく必要があります。

デメリット2:業者選びの手間

害虫駆除業者は数多く存在し、その技術力や料金体系は様々です。

中には、不当に高額な料金を請求したり、ずさんな作業を行ったりする悪質な業者も存在します。

信頼できる優良な業者を見つけるためには、複数の業者を比較検討する手間がかかります。

こんな場合は業者への依頼を検討しよう

以下のケースに当てはまる場合は、無理に自分で対処しようとせず、専門業者への相談を強くおすすめします。

  • 被害が庭全体など広範囲に及んでいる場合:自分での作業では駆除が追いつかず、被害がさらに拡大する可能性があります。
  • 高さ3m以上の高木に発生している場合:安全確保のため、プロに任せるのが賢明です。
  • 何度も駆除しているのに再発を繰り返す場合:見えない場所に卵が残っているなど、根本的な原因が解決できていない可能性があります。
  • 使用する薬剤の安全性に強い不安がある場合:特に、小さなお子様やペット、家庭菜園などがあるご家庭。
  • 忙しくて自分で作業する時間がない場合:手間をかけずに問題を解決したい方。

害虫駆除業者の費用相場

グンバイムシ駆除の費用は、被害状況、樹木の本数や高さ、作業面積、使用する薬剤などによって大きく変動します。

あくまで一般的な目安として参考にしてください。

料金体系は業者によって異なり、「作業員1名1時間あたり〇〇円」といった時間制や、「庭木1本あたり〇〇円」といった単価制、「一式〇〇円」といった形があります。

一般的には、基本料金や出張費(5,000円~10,000円程度)に、実際の作業費が加算されることが多いです。

【費用目安】

  • 低木(高さ3m未満)1本あたり:8,000円~15,000円
  • 高木(高さ3m~5m)1本あたり:15,000円~30,000円
  • 高所作業車が必要な場合:別途追加料金

正確な料金を知るためには、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。

その際、料金の内訳(薬剤費、人件費、出張費など)が明確に記載されているかを確認することが重要です。

見積もり以上の追加料金が発生しないかどうかも、事前に確認しておきましょう。

信頼できる害虫駆除業者の選び方

安心して任せられる優良な業者を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

ポイント1:見積もりが無料で内訳も明確か

依頼前には必ず現地調査をしてもらい、詳細な見積もりを出してもらいましょう。

その際、見積もりが無料であることは必須条件です。

作業内容や料金の内訳が「一式」ではなく、具体的に記載されているかを確認し、不明な点は納得がいくまで質問しましょう。

ポイント2:実績と専門性があるか

業者のウェブサイトなどで、庭木や植木の害虫駆除に関する実績を確認しましょう。

施工事例の写真などが掲載されていると参考になります。

また、「防除作業監督者」や「樹木医」といった資格を持つスタッフが在籍しているかどうかも、技術力を測る一つの指標になります。

ポイント3:保証制度の有無を確認する

優良な業者の多くは、施工後の保証制度を設けています。

「万が一、一定期間内に再発した場合は無料で再施工する」といった保証があれば、技術力に自信がある証拠とも言え、安心して依頼できます。

保証期間や内容は業者によって異なるため、契約前に必ず確認しましょう。

ポイント4:口コミや評判を参考にする

インターネット上の口コミサイトや地域の評判も参考にしましょう。

ただし、すべての情報が正しいとは限らないため、あくまで参考程度に留め、最終的には自分自身の目で判断することが大切です。

ポイント5:複数の業者から相見積もりを取る

最も重要なのが、2~3社から相見積もりを取ることです。

料金だけでなく、担当者の対応の丁寧さ、説明の分かりやすさ、提案内容などを総合的に比較検討し、最も信頼できると感じた業者に依頼しましょう。

業界団体である公益社団法人 日本ペストコントロール協会のウェブサイトで地域の会員企業を探すのも一つの方法です。

農薬を使わないグンバイムシの駆除方法

大切に育てている植物に、できるだけ化学合成農薬は使いたくない。

そう考える方は少なくないでしょう。

特に、お子様やペットがいるご家庭、あるいは家庭菜園で野菜やハーブを育てている場合、薬剤の使用には慎重になるものです。

ここでは、農薬を使わずにグンバイムシを駆除するための、環境に優しく安全な方法を具体的にご紹介します。

これらの方法は、グンバイムシの発生初期や被害がまだ少ない段階で特に効果を発揮します。

根気強い対策が必要になることもありますが、植物への負担を最小限に抑えながら、厄介なグンバイムシを退治していきましょう。

発生初期に有効な駆除方法

グンバイムシの被害を見つけたら、すぐに取りかかれる物理的な駆除方法があります。

薬剤を使わないため、準備も手軽ですぐに実行できるのが大きなメリットです。

数が少ないうちに対処することで、被害の拡大を効果的に食い止めることができます。

強力な水流で洗い流す

グンバイムシは体の構造上、水に非常に弱いという性質があります。

この弱点を利用し、ホースの水流で直接洗い流すのは、最も手軽で効果的な初期対策の一つです。

特に、虫が密集している葉の裏を狙って、シャワーやジェットなど少し強めの水流で勢いよく水をかけましょう。

成虫だけでなく、動きの鈍い幼虫もまとめて洗い流すことができます。

作業を行う際は、水圧で植物の葉や花、新芽を傷つけないように注意してください。

洗い流した後は、株元の土が過湿状態にならないよう、風通しを良くしてあげることも大切です。

粘着テープやブラシで物理的に取り除く

被害範囲が限定的で、虫の数がまだ少ない場合には、手作業で取り除く方法も有効です。

ガムテープや梱包用の粘着テープをペタペタと葉の裏に貼り付けて剥がすことで、成虫や幼虫を効率よく捕獲できます。

また、使い古しの歯ブラシや絵筆のような柔らかいブラシで、葉の裏にいる虫を優しくこすり落とすのも良い方法です。

このとき、葉を傷つけないように力加減には十分注意しましょう。

捕獲した虫やこすり落とした虫は、その場で潰すか、ビニール袋に入れて確実に処分してください。

被害がひどい葉や枝を剪定する

葉が白く変色し、裏にフンや卵がびっしりと付いているなど、被害が特にひどい部分は、思い切って剪定してしまうのが最善策です。

被害を受けた葉や枝ごと切り取ることで、そこに潜む成虫、幼虫、そして卵をまとめて取り除くことができ、繁殖のサイクルを断ち切る効果が期待できます。

剪定には、清潔な剪定バサミを使用してください。

また、切り取った葉や枝は、絶対にその場に放置してはいけません。

グンバイムシが他の健全な場所へ移動してしまう原因になります。

すぐにビニール袋などに入れて口をしっかりと縛り、燃えるゴミとして処分しましょう。

剪定は、株全体の風通しを良くする効果もあり、グンバイムシが発生しにくい環境づくりにも繋がります。

自然由来の成分で駆除する方法

ご家庭にあるものや、自然由来の資材を活用してグンバイムシを駆除する方法もあります。

化学農薬に抵抗がある方でも安心して試せるのが魅力ですが、効果の現れ方には植物の種類や環境によって差が出ることがあります。

効果を断定するものではありませんが、試してみる価値のある方法です。

牛乳スプレーを散布する

アブラムシ駆除で知られる牛乳スプレーは、グンバイムシにも効果が期待できると言われています。

牛乳を水で1:1の割合で薄め、スプレーボトルに入れて葉の裏を中心に全体が濡れるように散布します。

散布された牛乳が乾燥する過程で膜を形成し、それがグンバイムシの気門(呼吸するための穴)を塞いで窒息させるという仕組みです。

効果を高めるためには、よく晴れた日の午前中に散布し、しっかりと乾燥させることがポイントです。

ただし、散布した牛乳をそのまま放置すると、腐敗して悪臭やカビの原因となることがあります。

散布後、数時間経って牛乳が乾いたら、水で軽く洗い流すようにしましょう。

木酢液や食酢を散布する

木酢液や食酢の独特の匂いを、グンバイムシをはじめとする多くの害虫が嫌います。

この性質を利用して、忌避剤(きひざい)として活用する方法です。

木酢液を使用する場合は、製品に記載されている希釈倍率(一般的に200倍~500倍)を必ず守って水で薄め、葉の裏を中心に散布します。

木酢液には植物の成長を助ける効果や土壌改良効果も期待できるとされています。

食酢を使う場合は、糖分の含まれていない穀物酢などを選び、水で25倍~50倍程度に薄めて使用します。

これらの方法は直接的な殺虫効果は弱いものの、グンバイムシを寄せ付けにくくする予防効果が期待できます。

ただし、どちらも濃度が濃すぎると植物の葉が焼けてしまうなどの「薬害」を引き起こす可能性があります。

使用する際は、まず目立たない部分で試してから全体に散布することをおすすめします。

市販の殺虫剤を使ったグンバイムシの駆除方法

農薬を使わない方法では駆除が追いつかないほど大量発生してしまった場合や、より確実かつ手軽に駆除したい場合には、市販の殺虫剤・農薬の使用が非常に効果的です。

グンバイムシは葉の裏に密集していることが多いため、薬剤が届きやすいように散布方法を工夫することが重要になります。

ここでは、殺虫剤の選び方から具体的なおすすめ商品、使用上の注意点まで詳しく解説します。

グンバイムシ駆除の殺虫剤・農薬選びのポイント

園芸店やホームセンターには様々な種類の殺虫剤が並んでいますが、グンバイムシに効果的なものを選ぶにはいくつかのポイントがあります。

  • 「適用害虫」にグンバイムシ類が含まれているか確認する
    まず基本として、商品のパッケージ裏面にある「適用病害虫」の欄に「グンバイムシ類」の記載があるかを確認しましょう。記載がない薬剤では、十分な効果が得られない可能性があります。
  • 薬剤のタイプ(接触剤・浸透移行性)で選ぶ
    殺虫剤には大きく分けて、薬剤が直接かかった害虫を駆除する「接触剤」と、植物が根や葉から薬剤を吸収し、その植物を食べた害虫を駆除する「浸透移行性」の2種類があります。

    • 接触剤(スプレータイプなど)見つけたグンバイムシに直接噴霧して駆除します。速効性が高いのが特徴です。
    • 浸透移行性(粒剤・一部のスプレー剤)葉の裏など、薬剤が直接届きにくい場所に隠れているグンバイムシにも効果を発揮します。また、効果の持続期間が長いものが多く、予防的な使い方も可能です。
  • 「農薬」として登録されているか確認する
    野菜やハーブ、果樹など、口に入れる可能性のある植物に使用する場合は、必ず農林水産省の登録がある「農薬」を選んでください。農薬登録のない殺虫剤を食用植物に使用することは法律で禁止されています。パッケージに「農林水産省登録第○○号」といった記載があるかを確認しましょう。
  • 薬剤抵抗性に配慮する
    グンバイムシは同じ系統の殺虫剤を使い続けると、薬剤が効きにくくなる「薬剤抵抗性」を発達させることがあります。もし効果が薄れてきたと感じたら、有効成分が異なる別の系統の薬剤に切り替える「ローテーション散布」を検討しましょう。

おすすめの殺虫剤 スプレータイプ

見つけたグンバイムシをすぐに駆除したい場合に便利なのがスプレータイプの殺虫剤です。

手軽に使え、速効性が期待できます。

住友化学園芸 ベニカXネクストスプレー

幅広い害虫に効果があり、病気の予防も同時にできる人気の殺虫殺菌剤です。

有効成分の「クロチアニジン」は浸透移行性を持ち、葉裏のグンバイムシにも効果を発揮します。

効果が約1カ月持続するのも魅力です。

ツツジやバラなど、多くの花木に使用できます。

フマキラー カダンセーフ

有効成分が食品由来の「ソルビタン脂肪酸エステル」で、化学合成殺虫剤の使用に抵抗がある方におすすめです。

お子様やペットのいるご家庭でも比較的安心して使用できます。

使用回数に制限がなく、収穫前日まで使える野菜も多いのが特徴です。

ただし、浸透移行性はないため、葉の裏までしっかりかかるように散布する必要があります。

おすすめの殺虫剤 粒剤タイプ(浸透移行性)

株元にまくだけで効果が長期間持続するのが粒剤タイプです。

散布の手間を減らしたい方や、予防効果を重視する方に最適です。

住友化学園芸 オルトランDX粒剤

浸透移行性殺虫剤の定番として、多くのガーデナーに愛用されています。

有効成分「アセフェート」と「クロチアニジン」が根から吸収され、植物全体に行き渡ることで、葉を吸汁するグンバイムシを内側から駆除します。

効果が長期間持続するため、発生初期にまいておくと被害の拡大を防ぐことができます。

住友化学園芸 ベニカXガード粒剤

殺虫成分に加えて殺菌成分も配合されており、害虫対策と病気対策が同時にできる便利な粒剤です。

株元にまくだけで、グンバイムシをはじめとした害虫や、うどんこ病・黒星病などの病気から植物を守ります。

殺虫剤・農薬を散布するときの注意点

殺虫剤・農薬は正しく使わなければ効果が半減したり、植物に害(薬害)が出たり、人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

使用する際は、以下の点に必ず注意してください。

  • 必ず製品ラベルの指示に従う
    使用前には必ず製品のラベルや説明書をよく読み、記載されている使用方法、希釈倍率、使用回数、対象植物などを守ってください。
  • 適切な服装で作業する
    薬剤を吸い込んだり、皮膚に付着したりするのを防ぐため、マスク、保護メガネ、ゴム手袋、長袖・長ズボンの着用を徹底しましょう。
  • 散布は風のない早朝か夕方に行う
    風が強い日に散布すると、薬剤が周囲に飛散してしまいます。また、日中の高温時に散布すると、薬剤がすぐに蒸発して効果が薄れたり、薬害の原因になったりします。比較的涼しく、風のない早朝や夕方が散布に適しています。
  • 葉の裏を中心にまんべんなく散布する
    グンバイムシは葉の裏に潜んでいるため、葉の裏側を重点的に、葉の表や茎など、株全体に薬剤がしっかりかかるように丁寧に散布しましょう。
  • 周辺環境に配慮する
    散布する際は、風向きに注意し、洗濯物やペット、池などに薬剤がかからないようにします。また、ミツバチなどの益虫に影響を与える農薬もあるため、花の咲いている時期の散布は避けるなどの配慮が必要です。
  • 希釈した薬剤は作り置きしない
    水で薄めて使うタイプの農薬は、時間が経つと効果が薄れてしまいます。必要な分だけ作り、その日のうちに使い切るようにしてください。

もう発生させない!グンバイムシの予防方法

一度グンバイムシが発生すると、大切な植物の景観を損なうだけでなく、完全に駆除するには手間と時間がかかります。

なによりも重要なのは、グンバイムシを「発生させない」ことです。

日頃のちょっとした心がけで、グンバイムシが好まない環境を作り、被害を未然に防ぎましょう。

ここでは、誰でも簡単に実践できる予防方法を具体的に解説します。

風通しを良くして発生しにくい環境を作る

グンバイムシは、高温で乾燥し、風通しの悪い場所を好んで発生します。

特に梅雨明け後の夏場に被害が拡大しやすいのはこのためです。

植物が密集している場所は、グンバイムシにとって絶好の隠れ家であり、繁殖場所となってしまいます。

定期的なお手入れで、風通しの良い環境を維持することが最も効果的な予防策です。

具体的な対策としては、まず「剪定」が挙げられます。

植物の内部まで風が通り抜けるように、混み合った枝や内側に向かって伸びる枝、枯れた枝などを切り落としましょう。

適切な剪定は、風通しだけでなく日当たりも改善し、植物自体の健康を促進する効果もあります。

植物が健康に育てば、病害虫への抵抗力も高まります。

また、これから植物を植える場合は、成長後のサイズを考慮して「株間を十分に空ける」ことが重要です。

植物同士が密着すると、その間の空間が蒸れてしまい、グンバイムシの温床になりかねません。

株元の雑草もこまめに除去し、株全体の風通しを確保するよう心がけましょう。

定期的な葉裏のチェックを習慣にする

グンバイムシの被害は、葉の裏側から始まります。

そのため、発生初期の段階ではなかなか気づきにくいのが厄介な点です。

被害が葉の表面に現れる頃には、すでに多数のグンバイムシが繁殖している可能性があります。

被害を最小限に食い止めるためには、早期発見・早期対応が何よりも大切です。

グンバイムシが活動を始める春先(4月~5月頃)から秋にかけて、水やりなどのタイミングで定期的に葉の裏をチェックする習慣をつけましょう。

特にツツジやサツキ、プラタナス、アジサイなど被害にあいやすい植物は重点的に確認してください。

チェックする際は、以下のポイントに注意してください。

  • 葉の裏に、体長2~4mm程度の小さな虫(成虫・幼虫)がいないか
  • 黒い点々とした汚れ(フン)が付着していないか
  • 葉の表面が白くかすれたように色が抜けていないか

もし数匹の虫や被害の初期症状を見つけたら、すぐに粘着テープで捕殺したり、強い水流で洗い流したりといった物理的な方法で取り除きます。

この段階で対処できれば、殺虫剤を使わずに被害の拡大を防ぐことが可能です。

まとめ

本記事では、グンバイムシの駆除と予防法を解説しました。

葉が白くかすり状になる被害を防ぐには、葉裏の黒い点を見逃さない早期発見が最も重要です。

発生初期であれば、農薬を使わずに水で洗い流す方法も有効ですが、大量発生した場合は市販の殺虫剤を使いましょう。

駆除に最適な時期は、活動が活発になる5月~7月です。

状況に合わせた駆除方法を選び、風通しを良くするなどの予防策を徹底して、大切な植物を守りましょう。


駆除ザウルス