さくらんぼ 害虫 駆除

大切に育てているさくらんぼの木に、「葉が縮れている」「幹に穴が空いている」「実に虫が入っている」といった被害が出てお困りではありませんか。

美味しいさくらんぼを収穫するためには、害虫の早期発見と適切な駆除、そして何よりも発生させない「予防」が最も重要です。

この記事では、さくらんぼの木に発生しやすいアブラムシやカミキリムシといった代表的な害虫の種類と見分け方から、初心者でも実践しやすい農薬を使った具体的な駆除方法、さらには木酢液や天敵を利用した自然に優しい対策まで、プロが徹底解説します。

年間を通した害虫対策のスケジュールも紹介しているため、この記事を読めば、いつ・何をすべきかが明確になり、害虫の被害を最小限に抑え、毎年たくさんの甘いさくらんぼを収穫できるようになります。

さくらんぼの木に発生しやすい害虫の種類と特徴

さくらんぼの木を元気に育て、美味しい実を収穫するためには、害虫の早期発見と対策が不可欠です。

害虫の種類によって発生時期や被害の状況、効果的な駆除方法が異なります。

まずは、さくらんぼの木に発生しやすい代表的な5種類の害虫とその特徴をしっかりと理解し、適切な管理につなげましょう。

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アブラムシ類

アブラムシは、さくらんぼの木で最もよく見られる害虫の一つです。

体長2~4mmほどの小さな虫で、緑色や黒色、赤色など様々な種類が存在します。

春になると新芽や若葉の裏に群生し、植物の汁を吸って生育を妨げます。

アブラムシの被害は吸汁による直接的なものだけではありません。

排泄物である「甘露(かんろ)」が葉や枝に付着し、それを栄養源として黒いカビが繁殖する「すす病」を誘発します。

すす病になると葉の表面が黒く覆われ、光合成が妨げられて木の成長がさらに悪化する原因となります。

また、ウイルス病を媒介することもあるため、見つけ次第、早急な駆除が必要です。

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シンクイムシ類

シンクイムシは、その名の通り果実の中に侵入(食入)して食害する害虫の総称で、主にガの幼虫です。

さくらんぼでは「モモシンクイガ」や「ナシヒメシンクイ」などが問題となります。

成虫である小さなガが実に卵を産み付け、孵化した幼虫が果実の内部を食べ荒らします。

被害を受けた果実は、表面に小さな穴が開き、そこからフンが排出されていることもあります。

内部を食害された実は商品価値がなくなるだけでなく、腐敗しやすくなり、収穫前に落下してしまうことも少なくありません。

成虫は年に複数回発生するため、開花後から収穫期まで継続的な注意と対策が求められます。

カミキリムシ(テッポウムシ)

カミキリムシの幼虫は「テッポウムシ」とも呼ばれ、さくらんぼの木の幹や太い枝の内部を食い荒らす、非常に厄介な害虫です。

成虫は初夏から夏にかけて木の表面に産卵し、孵化した幼虫が樹皮の下に潜り込んで木部を食害します。

被害のサインとして、幹の根元に木くずやおがくずのようなフンが落ちているのが特徴です。

幼虫は数年にわたって木の中で成長するため、気づかないうちに被害が進行し、養分や水分の通り道が破壊されてしまいます。

その結果、木全体の樹勢が著しく低下し、被害が大きい場合には木が枯れてしまうこともあるため、早期発見と駆除が極めて重要です。

特にゴマダラカミキリによる被害が多く報告されています。

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カイガラムシ類

カイガラムシは、硬い殻や白い綿のような分泌物で体を覆っている小さな害虫です。

枝や幹、葉に固着して樹液を吸うため、大量に発生すると木の生育が悪くなります。

種類が非常に多く、さくらんぼではヤノネカイガラムシやウメシロカイガラムシなどが発生します。

アブラムシと同様に排泄物がすす病の原因となるほか、こうやく病という病気を引き起こす種類もいます。

成虫になると薬剤が効きにくくなるため、幼虫が活動を始める5月~7月頃が駆除の重要なタイミングとなります。

冬の間にマシン油乳剤などを散布し、越冬している成虫や卵を駆除することも効果的な予防策です。

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ハダニ類

ハダニは0.5mm程度と非常に小さく、肉眼での確認が難しい害虫です。

主に葉の裏に寄生して汁を吸います。高温で乾燥した環境を好み、特に梅雨明けから夏にかけて急激に増殖します。

被害を受けた葉は、葉緑素が抜けて白っぽいカスリ状の斑点が無数に現れ、光合成の能力が低下します。

被害が拡大すると葉全体が黄色や褐色に変色し、早期に落葉してしまうこともあります。

樹勢の低下に直結するため、美味しい実を育てるためには見過ごせません。

多発すると葉の裏にクモの巣のような細かい糸を張ることも特徴です。

葉の状態をこまめに観察し、発生初期に対処することが大切です。

【害虫別】さくらんぼの木の害虫駆除の具体的な方法

さくらんぼの木に害虫が発生してしまった場合、被害の拡大を防ぐために迅速な駆除が必要です。

駆除方法には、効果の高い「農薬(殺虫剤)を使う方法」と、環境や人体への影響が少ない「農薬を使わない自然な方法」の2つがあります。

害虫の種類や発生状況、ご自身の栽培方針に合わせて最適な方法を選びましょう。

ここでは、それぞれの具体的な駆除方法について詳しく解説します。

農薬(殺虫剤)を使った駆除

農薬(殺虫剤)は、大量発生した害虫や、物理的な駆除が難しい害虫に対して非常に効果的です。

正しく使用すれば、短時間で確実に害虫を駆除できます。

ただし、使用方法を誤るとさくらんぼの木自体を傷めたり、人体に影響を及ぼしたりする可能性があるため、必ず製品ラベルの指示に従って使用してください。

初心者におすすめの薬剤

家庭菜園でさくらんぼを育てている初心者の方でも扱いやすい、代表的な農薬をいくつかご紹介します。

購入の際は、必ずラベルの「適用作物」に「おうとう(さくらんぼ)」の記載があることを確認してください。

  • スプレータイプの薬剤(ベニカXファインスプレーなど)
    希釈する必要がなく、購入後すぐに使える手軽さが魅力です。殺虫成分だけでなく殺菌成分も含まれている製品が多く、害虫駆除と病気予防を同時に行えます。アブラムシやハダニなど、比較的小さな害虫の発生初期におすすめです。
  • 乳剤・水和剤(スミチオン乳剤、マラソン乳剤など)
    水で薄めて噴霧器で散布するタイプの農薬です。幅広い種類の害虫に効果があり、コストパフォーマンスに優れています。シンクイムシやカミキリムシの幼虫など、様々な害虫対策に利用できます。
  • 粒剤(オルトラン粒剤など)
    木の根元に撒くことで、有効成分が根から吸収されて木全体に行き渡る「浸透移行性」の殺虫剤です。直接薬剤がかかりにくい場所にいるアブラムシやカイガラムシなど、樹液を吸う害虫(吸汁性害虫)に高い効果を発揮します。効果が長期間持続するのも特徴です。

農薬を散布する時期と注意点

農薬の効果を最大限に引き出し、安全に使用するためには、散布する時期と注意点を守ることが極めて重要です。

以下のポイントを必ず守りましょう。

散布に適した時期と時間帯

  • 時期:害虫が活動を始める春先(新芽が動き出す頃)や、害虫を見つけ次第、発生初期に散布するのが最も効果的です。開花時期は、受粉を助けるミツバチなどの益虫を保護するため散布を避けてください。また、収穫期直前の散布は、果実に農薬が残留する可能性があるため、各農薬に定められた「使用時期」を必ず確認し、収穫の何日前まで使用できるかを守りましょう。
  • 時間帯:風のない日の早朝か夕方に散布します。日中の気温が高い時間帯は、薬剤が蒸発しやすく、薬害(葉焼けなど)の原因になるため避けてください。また、雨が降る直前や降雨中の散布は、薬剤が流れてしまい効果が薄れるので控えましょう。

散布時の注意点

  • 安全装備:農薬を吸い込んだり、皮膚に付着したりするのを防ぐため、マスク、ゴーグル、長袖・長ズボン、ゴム手袋を必ず着用してください。
  • 散布方法:葉の裏や枝の付け根など、害虫が隠れやすい場所にも薬剤がしっかりかかるように、木全体にまんべんなく散布します。
  • 希釈倍率の厳守:乳剤や水和剤を使用する場合は、規定の希釈倍率を必ず守ってください。濃度が濃すぎると薬害の原因となり、薄すぎると十分な効果が得られません。
  • 周辺への配慮:風向きに注意し、近隣の住宅や畑、洗濯物、ペットなどに薬剤がかからないように細心の注意を払いましょう。

農薬を使わない自然な害虫駆除

「できるだけ農薬は使いたくない」という方や、収穫間近で農薬が使えない場合には、自然由来の資材や生物の力を利用した駆除方法が有効です。

農薬に比べて効果は穏やかですが、環境への負荷が少なく、安心して試すことができます。

木酢液や牛乳スプレーで対策する

家庭で手軽に作れるスプレーで、害虫を駆除・忌避する方法です。

  • 木酢液:木炭を作る際に出る煙を冷却して液体にしたもので、独特の香りで害虫を寄せ付けにくくする忌避効果が期待できます。製品の指示に従って200~500倍程度に水で薄め、定期的にスプレーします。土壌の微生物を活性化させる効果もありますが、殺虫効果はほとんどありません。予防的な使用が中心となります。
  • 牛乳スプレー:アブラムシやハダニなど、体の柔らかい小さな害虫に有効です。牛乳を水で1:1に薄めたものをスプレーし、乾かすことで膜を作り、害虫を窒息させます。散布後は牛乳が腐敗して悪臭やカビの原因になるため、よく晴れた日に水でしっかりと洗い流すことが重要です。

天敵を利用して害虫を減らす

害虫を食べてくれる「天敵」を味方につけることで、害虫の数をコントロールする方法です。

化学農薬を使わないことで、天敵となる益虫が自然と集まりやすい環境を作ることができます。

  • アブラムシの天敵:テントウムシやその幼虫、ヒラタアブの幼虫、クサカゲロウの幼虫などは、アブラムシを好んで捕食します。
  • ハダニの天敵:カブリダニ類はハダニを捕食します。

これらの天敵を呼び寄せるには、彼らの隠れ家や餌となる植物(バンカープランツ)をさくらんぼの木の近くに植えるのが効果的です。

例えば、カモミールやマリーゴールド、クリムソンクローバーなどは、多様な益虫を引き寄せる効果があると言われています。

殺虫剤の使用を控えることが、天敵が住み着くための第一歩となります。

さくらんぼの木の害虫を発生させないための予防策

さくらんぼの木に発生する害虫の駆除も重要ですが、それ以上に大切なのが「害虫を発生させない」ための予防策です。

害虫が発生してから対処するよりも、日頃の栽培管理で害虫が寄り付きにくい環境を整える方が、結果的に農薬の使用を減らし、木への負担も少なく済みます。

ここでは、誰でも実践できる効果的な予防策を4つのポイントに分けて詳しく解説します。

これらの対策を年間を通して行うことで、健康で美味しいさくらんぼの収穫を目指しましょう。

剪定で風通しを良くする

害虫予防の基本は、剪定によって木の風通しと日当たりを改善することです。

アブラムシやカイガラムシ、ハダニなどの多くの害虫は、湿気が多く、葉が密集した薄暗い場所を好みます。

剪定によって枝葉が混み合っている場所をなくすことで、害虫の隠れ家を奪い、発生しにくい環境を作ることができます。

剪定の最適な時期は、さくらんぼの葉がすべて落ちた後の休眠期、具体的には12月から2月頃です。

この時期は木の活動が停止しているため、剪定によるダメージを最小限に抑えられます。

剪定では、主に以下の不要な枝を根元から切り落とします。

  • 内側に向かって伸びる「内向枝(ないこうし)」
  • 他の枝と交差するように伸びる「交差枝(こうさし)」
  • 真上や真下に勢いよく伸びる「徒長枝(とちょうし)」や「下垂枝(かすいし)」
  • 枯れてしまった「枯れ枝」

これらの枝を取り除くことで、木の内部まで日光が差し込み、風が通り抜けるようになります。

これにより、病気の原因となるカビの発生も抑制できます。

剪定でできた太い枝の切り口には、病原菌の侵入を防ぐために「トップジンMペースト」などの癒合剤を塗布しておくと安心です。

適切な栽培管理で木を健康に保つ

人間が健康だと病気にかかりにくいように、さくらんぼの木も健康であれば害虫に対する抵抗力が高まります。

弱った木は害虫にとって格好の標的となるため、日々の適切な栽培管理が何よりの予防策となります。

健康な木を育てるためのポイントは「水やり」「施肥」「土壌環境」の3つです。

  • 水やり:鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えます。地植えの場合は、植え付け直後を除き基本的に不要ですが、夏場に乾燥が続く場合は朝夕の涼しい時間帯に水やりをしましょう。過湿は根腐れの原因になるため、水のやりすぎには注意が必要です。
  • 施肥:肥料は木の成長と実りにとって不可欠ですが、与えすぎは禁物です。特に窒素成分が過剰になると、葉ばかりが茂ってしまい、アブラムシなどの害虫が発生しやすくなります。肥料は主に、冬の休眠期に与える元肥(有機質肥料など)と、収穫後に木の体力を回復させるためのお礼肥の2回が基本です。製品の規定量を守り、バランスの取れた肥料を与えましょう。
  • 土壌環境:さくらんぼは水はけの良い土壌を好みます。植え付けの際には腐葉土や堆肥を十分に混ぜ込み、土壌を改良しておきましょう。また、木の株元に雑草が生い茂っていると、害虫の隠れ家になったり、養分を奪われたりします。定期的に除草を行い、株元を清潔に保つことも大切です。

冬の薬剤散布で越冬害虫を駆除

冬の間に潜んでいる害虫の卵や幼虫を駆除しておくことは、春以降の害虫大発生を防ぐために非常に効果的な対策です。

カイガラムシやハダニ、アブラムシなどの多くは、卵や幼虫の状態で樹皮の隙間や枝の付け根で冬を越します(越冬)。

この越冬害虫を駆除するために、葉が完全に落ちた12月~2月の休眠期に薬剤散布を行います。

この時期は葉がないため、薬剤が木の幹や枝の隅々まで届きやすく、高い効果が期待できます。

代表的な薬剤としては、「石灰硫黄合剤」や「マシン油乳剤」があります。

石灰硫黄合剤は殺菌効果も高く、縮葉病などの病気予防も同時に行えます。

マシン油乳剤は、油の膜で害虫を窒息させる物理的な作用で駆除するため、薬剤抵抗性がつきにくいのが特徴です。

どちらの薬剤も、使用前には必ず製品ラベルの記載内容を確認し、正しい希釈倍率と使用方法を守ってください。

また、石灰硫黄合剤はアルカリ性が強いため、散布時には保護メガネや手袋、マスクを着用し、皮膚や目に付着しないよう十分注意しましょう。

近隣の住宅や車にかからないよう、風のない穏やかな日に行うことも重要です。

防虫ネットで物理的に守る

農薬の使用をできるだけ避けたい場合や、特定の害虫の被害に毎年悩まされている場合には、防虫ネットで木全体を覆う物理的な防除が非常に有効です。

特に、さくらんぼの果実に侵入するシンクイムシ類の成虫(蛾)や、幹に産卵するカミキリムシ、葉を食害するコガネムシなどの飛来してくる害虫を防ぐのに絶大な効果を発揮します。

ネットをかける時期は、害虫が活動を始める春先から収穫期までが理想です。

ネットの網目は1mm以下の細かいものを選ぶと、小さな害虫の侵入も防ぐことができます。

木全体をすっぽりと覆い、裾に隙間ができないように地面にしっかり固定することがポイントです。

ネットが枝葉に密着していると、その上から産卵されることがあるため、支柱を立ててネットと木の間に空間を作るとより効果的です。

ただし、さくらんぼは受粉が必要なため、開花時期にはミツバチなどの訪花昆虫が入れるように一時的にネットを外すか、人工授粉を行う必要がありますので注意しましょう。

【年間スケジュール】さくらんぼの木の害虫対策

さくらんぼの木の害虫対策は、年間を通した計画的な管理が成功の鍵です。

害虫の活動サイクルと樹木の生育ステージに合わせて適切な作業を行うことで、被害を最小限に抑え、健康な木で美味しい実を育てることができます。

ここでは、季節ごとに実践すべき具体的な害虫駆除と予防策を詳しく解説します。

春に行うべき害虫駆除と予防

春は、さくらんぼの木が休眠から目覚め、害虫たちも活動を開始する重要な時期です。

新芽や蕾を狙う害虫への対策が中心となります。

早期の対策が一年間の発生状況を左右します。

3月頃、新芽が動き出す前は、冬の対策の最終チャンスです。

マシン油乳剤や石灰硫黄合剤の散布がまだの場合は、この時期までに行いましょう。

これにより、越冬したカイガラムシやハダニの卵を駆除できます。

ただし、芽が膨らみ始めると薬害の恐れがあるため、時期を逃さないよう注意が必要です。

4月から5月にかけては、アブラムシやシンクイムシ類の活動が活発になります。

特にアブラムシは新芽や若葉に群生し、生育を阻害します。発生を確認したら、速やかに専用の殺虫剤を散布してください。

このとき、展着剤を混ぜると薬剤が葉にしっかり付着し、効果が高まります。

ただし、さくらんぼの開花期間中は、受粉を助けるミツバチなどの益虫を守るため、薬剤散布は絶対に避けてください。

花が咲き終わった後、実がつき始めた頃に再度、害虫の発生状況を確認し、必要であれば殺虫剤と殺菌剤を散布します。

夏に行うべき害虫駆除と予防

夏は気温が上昇し、害虫の発生がピークを迎える季節です。

特に収穫後の管理が、来年の収穫量に大きく影響します。

高温と乾燥、あるいは梅雨時期の多湿など、環境に応じたきめ細やかな対策が求められます。

6月から7月は収穫期にあたります。収穫中は農薬の使用を控え、収穫が終わった直後に「お礼肥」を施すとともに、殺虫剤・殺菌剤を散布します。

これは、収穫で疲弊した樹木の体力を回復させ、夏に多発する害虫から守るために非常に重要です。

この時期に最も注意したいのが、カミキリムシ(テッポウムシ)です。

成虫が飛来し、幹の根元に産卵します。

定期的に株元を観察し、木くず(フラス)が出ていないかチェックしましょう。

フラスを発見したら、幼虫が幹の内部に侵入している証拠です。

針金などで幼虫を掻き出すか、専用のノズルが付いた殺虫剤を穴に注入して駆除します。

また、高温で乾燥した環境が続くとハダニが大量発生しやすくなります。

葉の裏がかすり状に白っぽくなっていたら、ハダニの被害を疑いましょう。

葉の裏を中心に葉水をかけるか、専用の殺ダニ剤で対処します。

風通しを良くする夏剪定も、病害虫の予防に効果的です。

秋に行うべき害虫駆除と予防

秋は、多くの害虫が越冬の準備を始める時期です。

この季節に越冬場所をなくし、越冬する害虫の数を減らしておくことが、翌春の被害を軽減するための重要なポイントとなります。

9月から11月にかけて、さくらんぼの木は落葉します。

病害虫の温床となる落ち葉は、こまめに集めて処分しましょう。

そのままにしておくと、病原菌や害虫の卵が土壌で越冬してしまいます。

落葉が進んだら、幹や太い枝の古い樹皮を剥がす「粗皮削り」を行います。

樹皮の隙間は、カイガラムシやシンクイムシの蛹などが越冬する絶好の隠れ家です。

ヘラやワイヤーブラシを使って優しく剥がし、潜んでいる害虫を物理的に取り除きます。

この作業は、翌年の害虫密度を大幅に下げる効果が期待できます。

冬に行うべき害虫駆除と予防

冬はさくらんぼの木が休眠期に入り、一見すると作業がないように思えますが、実は来シーズンに向けた最も重要な害虫対策の時期です。

休眠期だからこそ使える薬剤もあり、効果的に越冬害虫を駆除できます。

12月から2月にかけて、まずは剪定を行います。

混み合った枝や枯れ枝を整理し、樹木全体の風通しと日当たりを良くします。

これにより、病害虫が発生しにくい環境を作ることができます。剪定で出た枝は、害虫が潜んでいる可能性があるため、必ず処分してください。

そして、冬の害虫対策の基本となるのが、休眠期の薬剤散布です。12月から1月にかけてマシン油乳剤を散布すると、油膜でカイガラムシやハダニの卵を窒息させて駆除できます。

さらに、発芽直前の2月頃に石灰硫黄合剤を散布します。

これは殺菌・殺虫効果が非常に高く、多くの病害虫に効果がありますが、薬害が出やすいため、必ず規定の希釈倍率と散布時期を守ってください。

これらの冬期防除を徹底することが、春以降の管理を楽にするための最大の秘訣です。

まとめ

本記事では、さくらんぼの木に発生しやすい害虫の種類と特徴、具体的な駆除方法から予防策までを網羅的に解説しました。

さくらんぼを元気に育て、美味しい果実を収穫するためには、害虫の特性を理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。

アブラムシやシンクイムシ、カミキリムシといった害虫に対しては、発生初期に殺虫剤や木酢液などで対処することが被害を最小限に抑える鍵となります。

しかし、最も重要かつ効果的なのは、害虫を発生させないための「予防」です。

その理由は、一度害虫が大量発生すると駆除が困難になり、木自体が弱ってしまうためです。

日頃から適切な剪定で風通しを良くし、木の健康を維持することが、害虫が寄り付きにくい環境を作る最善策と言えます。

また、防虫ネットの設置や、冬の休眠期に行う薬剤散布は、翌シーズンの害虫発生を大きく抑制する上で非常に有効です。

さくらんぼの害虫対策は、年間スケジュールに沿って計画的に行う必要があります。

本記事で紹介した季節ごとの対策を参考に、日々の観察を怠らず、大切な木を守り育てていきましょう。

愛情を込めた手入れこそが、美味しいさくらんぼを実らせる一番の秘訣です。